世界の果てで、あなたと。 明け方にスマホの着信音が鳴って、ベッドの中で着信画面を見て息が止まりそうになった。画面には『鯉登音之進』と表示されている。俺は『鯉登音之進』から逃げてきたから、この電話に出るわけにはいかなかった。
最後に鯉登音之進……音に会ったのは二年前だ。
俺たちは生い立ちや価値観、食べ物の好み、何もかもが全て違っていたが、同じ夢があったことで知り合い、そこで意気投合して、そしてすぐに恋に落ちた。
音は無邪気な笑顔で俺を散々振り回し、俺はそんな音に振り回されている『自分』が好きで、他人から見たら共依存のような恋愛ではあったが、まわりから何と言われようと、俺は海の底に沈むように音に沈み、音も俺に沈んでいったと思う。時々この恋で溺れてお互い息継ぎが上手くいかなくて、もっと愛して欲しいとか、もっとこっちを見て欲しいとか、そんな喧嘩をたびたびしたけれど、そんな時は激しく唇を合わせ、お互いの呼吸を整え、気持ちも整えた。
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