神隠しツアー! in 歌仙兼定「と、言う訳で弊本丸の歌仙さんの神域にやってきました! さあ、一体何があるのでしょうか! わくわくしますねー」
「……さっきから一人で話しているのは何なんだい」
「音声記録をとっています。カメラは真っ暗になってしまったので」
「ねぇきみ、飛んで火にいる夏の虫という言葉を知ってるのかな」
襖を開けるとざーっと紙束が雪崩のように溢れてきた。
「これは……」
「事前に来てくれると言ってくれたのなら片付けたものを……君宛ての歌だよ」
「……すごい数ですね」
「こちらに良く出来たものをまとめた和歌集があるから、持っていくといい」
「お土産付き」
和紙の表紙の素敵な装丁。薄い本のようだが持つと何故か二十倍くらいの重量がある。
「次のお部屋はいけーん! ここは?」
まるで美術館のように硝子の中に何かが並んでいる。よく見ればそれは敵の首だった。
「今まで君に使われた証だよ」
「戦績部屋(物理)ですね」
所々に置かれている巻物に戦績やらが書き記されている。筆まめだ。
「主との思い出が詰まっている。どうかな」
「ホラーゲームの世界に迷い込んだかと思いました」
少し歩いて奥をのぞき込む。相当遠くまで続いていそうだ。
「展示を最後まで見ると空のケースがあって閉じ込められたりしそうですね!」
「……」
「なんで黙るの歌仙さん」
「お茶でも飲むかい? 主」
「あ、申し訳ありませんが飲食厳禁なんですよ。ヨツモ何とかで食べちゃ駄目! って説明書に書いてありました。残念ながらここでお時間です。それではまた来週!」
「まさかとは思うが第二回があったりするのかい」
「はい! そして安全装置が作動するので三十分ほどで自発的に帰還出来て安心安全です」
「……へえ、安全装置とやらが壊れてしまったら大変だね。主、まだ紹介していない部屋があるから次もきっと楽しめるよ」
〈おしまい〉