「寒いな」
「寒いわね」
「ガウーゥ」
11月も後半。酷暑を乗り越え、秋がやってきたと思ったら、一瞬にして雪舞う気温になってしまった某所。
三人の幼きデュエリストはガルド城の長ーい廊下のでかーい窓に手をつき、鼻をつけて外を眺めていた。
「もうこのワンピースじゃ外歩けないわね」
ピンクのワンピースにとんがり帽子を被ったIが、冷気から逃げるために窓から一歩離れた。
ガルド城は暖房が効いているが、流石に廊下は冷える。
「見てるこっちが寒いし、西松屋にでも行ってこいよ」
「A、アンタね、このアタシの服がそこらの白ウサギの店で買えると思ってるの?ありえないわ。」
「それに、アンタだって半袖短パンじゃない。マントを巻いてもごまかせるのは見た目だけよ。風邪引くわよ」
Aはマントの端をお腹の前で結び、フードを被って寒さを耐えているが、鼻が垂れている。
「オレはいいんだよ。城出るのめんどくせえじゃん。どーせ外の作戦には連れてってもらえないし。…もう一枚マント羽織れば冬越せるだろ。」
「アンタねぇ…Hにくっつきながら言っても説得力ナイわよ」
「ガウオゥ」
いつの間にか木に止まるカブトムシのようにピッタリとHくっついているA。
Hは体温が高いので、夏は遠巻きにされるが、冬は現金な奴らがおしくらまんじゅうと言いながら近寄ってくる。Aも現金ななやつらの一人である。
「仕方ないわね~。アタシの魔法で暖かい服出したげよっか?」
「…!そんなことできんのかよ!」
「できちゃうのよね〜魔女っ子に不可能はないのよ。ピーリカふかふかのお洋服よ出ろ!」
「おおっ!」
Iのロッドがキラキラと光り出した。光が形を作り、3人の前に冬用のふかふかとした子供服へと姿を変えた。
早速マントを外し半袖の上に袖を通す。オーダーメイドのような着心地の服にはしゃぐA。
「おー!オレにぴったりじゃか。チョーあったけー!!」
「どんなものよ!魔女っ子Iさまを褒め称えなさい。オ〜ッホッホッホッホ〜〜!」
Aは窓の前でクルクルと回り、新しい服のビジュアルを確かめている。似合う似合うとごきげんだ。
一方Iは高笑いを終えると、目線をAに戻し、口角を上げた怪しいえみを浮かべていた。そう、Iが無償で魔法を使うわけないのだ。
「…コホン、それじゃあA、今度はアタシの服選びを付き合うのよ。いいわね!ほら、はやくUFO出してきなさい!デパートに行くわよ〜」
「ガウー!!」
「えーっ、そりゃねぇぜ」
ーそのころ城外ではー
「俺のマントに切り抜きが?!え、寒っ!!何この型紙切り抜いたみたいな跡は?!怪奇現象!?ちょ、K助けてっ」
「うっさいわねJ!オシャレは忍耐なのよ!このスカート丈が見えないの!?マントくらいでぐたくだ言うな癇に障るっっ!!!」
今日もガルドは平和です。