たいやきPROGRESS書き下ろし2の途中まだ変わるかもしんないけど。 806 たいやきPROGRESS書き下ろしの冒頭部分仮タイトル『七緒ちゃんのドキドキ💖東下り』東へ向かう長い旅路の小休止。七緒は濃い葉の連なりが天然の四阿になったような一角で、うとうとと微睡んでいた。ふと目覚めると、世界中の幸せを独り占めしたような顔がこちらを覗きこんでいる。「お目覚めかい? 神子殿」優しい囁きを溢して、男は翳していた扇をゆっくりと閉じた。葉陰を縫って届く日差しが悪戯心を起こして、乙女の午睡を妨げぬようにしていたのだ。「あ……ごめんなさい。つい眠っちゃって」「構わないぜ。次の宿場まではもうすぐだ。そう急がんでもいいが、歩けそうかい?」「はい。大丈夫です」隣に腰を下ろしていた大きな身体が立ち上がって一歩進むと、初秋の涼やかな風が吹き抜けてくる。差し出された手を取って自分も身を起こした。繋がった手から、ただの気遣いとは異なる慈しみを感じて、七緒の胸は俄に踊り始める。この東下りが始まってから、ずっとこの繰り返しだった。 381 1