この人を見よSide リョータ
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どうしても嫌いなものがある。
小学校高学年から中学生くらいの少年が、二、三人連れ立って、友人の名を呼ぶときの声。
声変わりをしたばかりのような、気安くて親しげなその声を聞くと、耳を塞いでしまいたくなる。
それに呼ばれて行ってしまう人は、「また」という言葉だけを残して、戻ってこないと知っているから。
『ソータぁ』
ソーちゃんだけじゃない。
『みっちゃーん』
また明日な、ってソーちゃんは言ったのに。
またやろうぜ、ってあの人は言ったのに。
「オレの名前を言ってみろ!」
知らねえ。知らねえ、知らねえよ!
バスケ上手い人としか知らなかったよ、あの時名乗らなかったじゃねえか。三連続、三発三中でスリーポイント決めた、きれいなフォームの上手い人。ディフェンスも上手くて、1ON1で全然抜けないのにそっちはオレに教える余裕まであった。
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