渡る霜月 西日が射すのも、もう随分と早くなった11月も終わりのある日のことでした。
五右ェ門が立ち動く気配で目を覚ました次元は、いつものソファに寝転がったまま音のする辺りへ顔を向けました。
「出掛けるのか」
「うむ。散歩がてら先日見掛けた和菓子屋へ行ってくる」
「ああ、あそこか。あそこなら近いし迷うこともねぇか」
読みかけの本を胸に置いたまま寝ていた次元は、蛍光灯の眩しさに目を細めながら、先週車で買い出しに出た日の記憶を手繰りました。スーパーで一週間分の食料と洗剤などの細々とした日用品を買い求めた二人は、山のような荷物を車に乗せて信号待ちをしていました。ちょうど家まであと半分程の場所です。そこで五右ェ門が視線を前方の、ある一点へ向けました。すぐに信号は青に変わり、次元は車を発進させます。
6599