頭の中を、小さな数字たちがせわしなく走り回っている。
そんな馬鹿げたイメージが脳裏に浮かぶとき、ルーサーは自分が疲れすぎていると自覚していた。人間とは、考えることが多い。常にたくさんの問題を抱えていて、一つずつ、あるいは二つや三つずつ解決していかなくてはならない。時に、解決が新たな問題を生むこともあるだろう。なんてことだ。例えるなら、夜に食べた食事が碌に消化されないまま朝を迎えたような、そんなすっきりしない感覚を覚えて嫌になる。深く長くため息を吐きながら、なんて人間らしい悩みなんだと自分を誇らしく思った。
しかし、ずっと悩みの中にいたり疲れすぎていることは物事の停滞を招く。事態を好転させるため、いまルーサーに必要なものは、十分な休息、または心を安らげるための何か―――淹れたてのハーブティーやお気に入りのテレビ、ペットたちの顔と一緒にまた無数の数字が頭をよぎりだして、もう今日はこれ以上考えたくないとうんざりしたとき、扉からコッコッと小さなくちばしで突くような音がした。
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