トロイメライ田口が教室に忘れ物をしたことに気がついたのは、水尾と帰っている道中のことだった。
先に帰ってくれ、と水尾に伝え、慌てて元来た道へと戻る。
よりにもよって課題に必要な教科書を忘れるとは。
あの国語教師は厳しい。
課題を忘れたとあれば、どんな叱責を受けるかわかったものではない。
まだ18時だというのに、辺りはすっかり暗くなっていた。
呼吸をするたびに冷たい空気が喉を刺すが、構わず走り続ける。
校門を抜け、靴を履き替えるのもそこそこに教室へと向かった。
校舎には人影がなく、田口の足音だけが響く。
教室の扉に手をかけ引っ張ると、鍵はかかっておらずそのまま開ける事ができた。
ついている。
職員室で教員に頭を下げる必要はなさそうだった。
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