境界を象った棺 だれがために
空を翔けるのか
十七歳のイーグルは孤独だった。彼個人としては間違いなく孤独だったのだがそれは主観の話で、第三者視点では多くの人に慕われ、憧憬を集め、いまも追いかけてくる女性士官候補生たちから逃れるため、校舎の屋上に走りこんできたところだった。人気は女性だけにとどまらず、同性からもファイターメカ操縦を手習いから学びたいなどと囲まれているのが常だった。イーグルは優秀で、何でもできた。座学は居眠りと戦うのが難であったが、実戦は特別に強く、ファイターメカの試合を国が公に始めた昔から継ぐ歴代勝者の中でも、とくに抜きんでた戦闘力を有していた。彼は国民総意の英雄とも言えた。誰もが彼を認め、反感を持つものでさえも実力は一目置かなくてはならず、もし彼を害そうとする者がいたとしても、自身を守る力を十分に備えていた。加えて全体的な見目がよく、その点でも人と違った存在感を放つのがイーグル・ビジョンだった。彼の容姿はやや中性的でありながら体作りはしっかりしており、甘い顔との対比に熱狂的な偶像視をするものもいて、イーグルはあまり人が得意ではなかった。
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