2023/8/25雨のひどく降る日だった。
雨雲が日を遮り、陰鬱とした空。三階渡り廊下に少女がひとり、白の格子の隙間から残暑、夏の終わりを感じさせる風が踝を撫でる。彼女はアカショウビンが鳴いていたのを思い出した。無性に寂しかった。アリーナの改装工事で体育館は使えず、久しぶりのオフになった彼女は、足早に下足室へ向かった。
ローファーに履き替え、折り畳み傘を鞄から取り出そうとした彼女の手は、その男を見て止まる。
湿気を帯びて潰れた朱色の髪。いつだって見てきたその背中は、彼女の知らないところで逞しく立派なそれに育っていた。そんな逞しい背中は愁いを帯びていた。
「新開」
彼女の声に振り返り、男はふと微笑む。何よりいつも通りの優しい笑顔とは裏腹に、表情に影が落ちているのは明らかだった。重く下がる瞼から覗かせるコバルトブルーは、蛍光灯の光を拒む。
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