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    doh_tikamiti

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    リクエストいただいた、「真EDの数年後、イア→シキで、まだ恋愛とか分からんシキくんに、保護者としての感情以外の思いをそっと寄せてる話」!リクエスト有難うございました♡

    ブルズアイ「いつかボクも人を好きになることがあるのかな」

     シキの呟きが、暖かいカモミールティの湯気の中に溶けていく。
     ワーカホリックになりがちなシキを皆が心配している。昔、彼の妹が、「あなたの負担にならないといいんだけど」と丁寧に前置きをして、「シキを見守ってあげてほしい」と頼んでくれた。それをいいことに、用がなくとも彼の部屋に立ち寄り、休憩を促すのが自然な成り行きになっている。
    「そうなるだろう」
     イアンは静かに言った。教会で神父が祈りの言葉を読む時のような、確信めいた声だった。
    「お前がそれを望むなら」
    「望む……っていうか、……そういうふうに……なるのかな? って……」
     シキはぽつり、ぽつりと語りだした。
    「あの……スイさんが、……ルークのこと、好きみたいで……」
    「ああ」
    「ルークの話をしてくれるんだけど、その時、本当に楽しそうだから……誰かを好きになったら、ボクもあんな風に……楽しい気持ちになったり……するのかな、って……」
    「………」
     イアンがもの言いたげに顔を持ち上げると、それだけでシキはイアンが言いたいことがわかったらしい。
    「あ……わかってる、楽しいだけじゃ……ないってこと。でも……そういうのも、含めて……誰かと一緒に、幸せになろう、って思う事、してみたいなって……」
    「……そうか」
     シキが白いマグカップに口をつけて、ちび、ちびとお茶を飲む。猫舌なのか、カモミールティーはまだ彼には熱すぎるようだった。その様子はまるで、小鳥が羽を休めて泉に潤いを求めるのに似ている。
     彼はまさしく、飛び立つ準備をしていた。今まで彼を縛り付けてきたあらゆる呪縛は、彼のたゆまぬ努力によって解け、はかない塵となった。
     彼はおそるべき学習能力をもっているから、一度コツを掴めばきっとあとはスムーズにいくだろう。知らないことを知ろうとすること、相手に歩み寄ろうとする優しさ。そういう彼の美徳は他に得難いもので、魅力といって良い。
     それに誰かが気づけば、彼が拒まなければ、間違いなくそこから始まる。
     だが同時に、終わるものもある。
    「………」
     イアンは、自分がどちらを望んでいるのか考えてみた。だがとても直ぐに答えが出るものではないし、本人を目の前にして考えることでもない。
     一度思考回路を断ち切った時、ふと、シキの肘のあたりにばんそうこうが貼ってあることに気づいた。
    「……怪我をしたのか。どうした」
     呼びかけて、自分の肘をとんとんと叩くと、シキは「ああ……」と腑抜けた声を出して、
    「昨日……眠くて。がくっと来た時、……その……ひっかけちゃって。大丈夫、痛くないから……血が、服に着かないようにっていうだけ……」
    「………そうか。気を付けろ」
    「うん……有難う。気づいてくれて、うれしい」
     そんな些細なことですら、彼は心から嬉しそうに言う。
     自分のまなざしを、言葉を、宝物のように思っているのだと隠さない目を潤ませて微笑むのだ。
    「…………」
     不意に、庇護対象や大切な仲間という名の隠れ家から引きずり出される、と錯覚する瞬間がある。他でもない、彼の手によって。自分自身の姿を隠すように、イアンは目を閉じた。
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