白澤様が色覚異常になる話ある日僕の視界から色が消えた。あぁ、それでは齟齬がある。正しく言えば僕の世界の色は三色になった。
黒と、白と、あの鬼の色。
話は遡るが、白と黒だけのそんな異常な世界になった僕はまず最初にいかに異変を周りに知られないようにするかで頭を悩ませた。生薬作りでの葉の見分け、人と対話する際の話題、料理も自分では上手く出来なくなった。でも生薬作りも料理も優秀な弟子がいたし、人との会話もなんとか乗り切った。女の子へのプレゼントは、色の話になった時墓穴を掘るから贈るのをやめた。
そしてなんとか色覚異常が出ている事を知られないように奮闘して生活している内に一つ気付いた。ある一つの色だけこの目に焼き付くように残る事を。
気付いたのは店にあの朴念仁が来た時だ。
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