せめてあと少しだけ この関係は一夜の過ちにしてあっさりと終えるつもりであった。
肥前の隣で眠る刀の後頭部を見つめる。此方を向いて眠らない辺りが一線を引かれているようで、それでも先程まではふたりの境界線が曖昧になっているのではないかという程に求め合ったというのに。
この陸奥守が本当に求めているのは肥前であって肥前でない。彼の本丸に所属する肥前忠広と、陸奥守と関係を持った肥前忠広。前者に想いを寄せる陸奥守と出会ったのはもう数ヶ月も前であった。
一仕事終えた後の塩大福は絶品で肥前のお気に入りである。いつもの茶屋、いつもの座席、いつもの塩大福。違ったのは目の前に現れた男の存在。
『おんし、政府所属の肥前なが? 隣、えいか?』
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