オートクチュール・マリッジ 1~2/ひよジュン 1
テーブルランプの照明を受けて、薬指のプラチナリングがつやりと輝いた。
日和の部屋、クイーンサイズのベッドに足を投げ出したジュンは、静かな光沢を放つそれをぼうっと眺めていた。三ヶ月前――去年のクリスマス頃に、日和から「プロポーズの予約だね」という言葉とともに渡された大切な贈り物である。
愛しい人からのプレゼントではあるが、ジュンはいまだに実感がわかなかった。薬指を甘く締めつける金属は、むずむずするようで形容しがたい、曖昧なかたちをしたジュンの心までは捉えきれていない。
「そもそも、プロポーズの予約って何なんすか」
おかしくって、ふはっと吐息のような笑い声が漏れる。エンゲージリングはプロポーズの言葉とともに渡すものだ。順番がごちゃごちゃになっているところを見るに、日和もいっぱいいっぱいだったのかもしれない。
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