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    あしドドドド

    @mydarlingmetal

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    ピアス学長夢小説(夢主≠エージェント)(書きかけ)

    夢主がアカデミーの卒業試験を受ける話の途中です。
    橿原(かしはら)は夢主の名前。
    途中なので誤字脱字は許してください。

    草冠「これより、卒業試験を始める」

    曇り空の朝、教官の声が響く。今日は運命の日。今までの努力が実を結ぶか水泡に帰すか、そのどちらかが決まる。イチかゼロかの勝負に橿原は怯えていた。勝つか負けるかなど、とうに慣れている筈だ。彼女は卓球部の試合でそれを何度も味わっている。しかしそれとは訳が違う。趣味の試合とは別の、自分の将来がかかっているからだ。
    アカデミーに入学できる人数はほんのひと握りで、AからDクラスまであるが、全体の人数は高校の一クラスも満たない数であった。そんな手で数え切れる他の生徒達も橿原と同じく、アカデミーのグラウンドの空気は張りつめていた。またそれとは別に、橿原はもう一つ別のプレッシャーを抱えている。

    「試験の前に、我がアカデミーの学長から激励のお言葉がある。ピアス様、どうぞこちらへ」

    教官は恭しく男をマイクスタンドの前へ案内する。

    「諸君、今日はライダーアカデミーの卒業試験…即ち今日この日で諸君の運命が決まる。今まで学んだきた全てを活かし、存分に実力を発揮したまえ」

    黒に緑の線が混じった不気味な仮面の男…ピアス学長は淡々と言葉を紡ぐ。決して甘やかし茶化すこともなく、生徒達の運命をありのままに強く訴える。

    (今日で…私の進路が決まる…。学長先生が私のために割いた時間を、無駄にしたくない…)

    彼女は人よりも様々な問題を抱えていた。コミュニケーション能力の欠如、制御不能な怪力、難しい座学…。元よりあまり優秀でないDクラスの中でも、中の下程度には成績が良くない。そんな橿原をサポートしてくれたのがピアス学長だ。忙しい日々の中で自分のために時間を作り講習を行い、時々立ち話をしてはメンタルケアをする。彼なしでここまで辿り着くことは不可能だった。
    だからこそ、学長の期待と今までの恩を裏切りたくない。
    進路と期待。二つの重しが橿原の心を押し潰していた。

    「ではAの一番!」

    ハッと気がつけばいつの間にか整列は終わり試験が始まっている。慌てて彼女は我に返った。Aクラスの優秀な男子は勢いよく返事をしグラウンドの真ん中へ歩む。男子は腰に大きなバックルのベルトを着用していた。

    「訓練の成果をここで見せてみよ!見事そのドライバーでライダーに変身することができれば、合格となる!」

    試験内容は至ってシンプルで、「国の精鋭部隊であるライダーに変身すること」である。単純な話とは裏腹に、それに至るまでの壮絶な訓練や模擬戦の数々を橿原を含めたグラウンドの生徒達は経験してきた。

    「さあ!カオスドライバーに己のカオスリングをかざすのだ!」

    男子は目を閉じ深呼吸する。沈黙の間。
    目を開き言葉を叫ぶ。

    「変身!」


    ドライバーに指輪をかざす。眩い光が溢れ出し彼の体を覆う。

    「うっ…ぐ…」

    力に耐えきれないのか、或いは力が強大すぎたのか、男子生徒は思わず苦しみの声を発した。

    「うっ…あ…あ…」

    「アアアアアアア!!!!!」

    猛獣の如く雄叫びをあげる。その瞬間、男子生徒の体は硬く光沢のあるスーツに覆われ顔は亀裂のような赤い模様が浮かび上がった。

    「ウアアアアア!!!!」

    その異常な光景に皆が驚愕する。それも束の間、ライダーに変身したと思われる男子は近くにいた他の生徒に殴りかかり、暴れ散らす。

    「おっおい!何するんだ!危ないだろ!?」

    その姿は凡そいつも大人しい優等生とかけ離れていた。ライダーを取り押さえようとAクラスの生徒達はあの手この手を試すも、力の差は歴然としており適うことがなかった。
    BやDクラスの橿原達は、口を開けて固まっている。

    「えっ…?一体何がどうなってるの…あれがライダー、なの…?」
    「わ、わからない…そ、そうだ、先生に助けてって言わなきゃ…あ、あの!教官」

    混乱と破壊の最中、橿原はやっとの思いで教職員に呼びかける。
    しかし返ってきた答えに絶句した。

    「す…」
    「す…?」

    「素晴らしい!!!!!!」

    「ヒェッ!?」

    感極まり感動の涙を流す教官。この事態に対し困惑も恐怖もなく、ただひたすらに歓喜を味わっていた。

    「き、教官!し、しっかりしてくださ…う、うわっこっちにも来るよ橿原ちゃん!?」
    「えっど、どどどうしよう」

    散々Aクラスのメンバーを痛めつけた後、次のターゲットは橿原のいるDクラスに定められた。

    「素晴らしい!実に素晴らしい!さぁ全員よく聞くがいい!カオスドライバーに各々のカオスリングをかざせ!そして変身しろ!」

    彼はとても正気の沙汰ではない。

    「お前ら!俺がアイツを食い止める!変身!」
    「ぼ、僕も…!変身…!」

    生徒の何人かは事態の収束のため変身を行う。しかし逆に、混沌が増すだけであった。

    「アアアアア!!!!」
    「オラァッ!!!!」

    視界に映る全てを破壊するライダー達。逃げ惑う生徒達。
    何もかもぐちゃぐちゃだった。橿原は目の前に起こる事象に頭が追いつかず、逃げることも変身することも何もできない。体が震えて寒くて怖くて、誰か助けを_

    「が、学長…先生…」

    藁にもすがる思いで教壇に立つピアス学長に視線を向けた。

    彼の口は、不敵に笑っていた。

    ━━━━━━━━━━━━━━━

    「こっちよ橿原!」
    「はぁ…はぁ…ま、待って…私そんな速く走れない…」
    「何言ってるのよ!?自分の命がかかってるのよ!?」
    「わかってるよ…!」

    変身していないクラスの生徒達は散り散りに逃げている。橿原と同じクラスの女子生徒は教室前の廊下を走っていた。アカデミーはとにかく広い。グラウンドはライダー達の戦場となっているため、裏から外へ脱出するしかなかった。しかし裏と言っても、それが何処にあるのか、そもそも存在するのかなど彼女達が知る由もない。
    右へ左へ。階段をかけ登り下る。あちこちのドアを開けては通路を探す。

    「逃がすか!!」

    脅威は暴走したライダー達だけではなかった。

    「うわぁ!こ、こっち来る!!」
    「なんですって…!?あっちへ走るわよ!」

    武装した戦闘員達が生徒を捕らえようとしているのだ。

    (どうしよう…もうここで死ぬしかないの…?)

    何故こうなった?自分は何処で間違えた?

    (学長先生…)

    笑っていたピアス学長が脳裏に浮かぶ。それでも、信じられなかった。いや信じたくなかった。あの学長が、こんな大惨事を許す筈がない。こうなることを予測していた…訳がない。

    (もう…走れない…)

    持久走ワーストクラスの彼女の体力は既に底を尽きていた。しかし足を止めれば追いつかれて殺されてしまう。

    (い、いやだ…死にたくないよ…)

    一か八か。角を曲がったすぐ先にある教室の中に入り扉を閉め、教室内のロッカーへ身を隠した。

    「何処だ!?」
    「あの先だ!階段を下って行ったぞ!」
    「しつこいわね…!ほら橿原…橿原!?橿原何処にいるの!?」

    ごめんなさい。
    「ここにいるよ」なんて言えないの。

    「まさか捕まった…!?もう!!置いてくわよ!!」

    せめて彼女だけでも生き延びて…と願う。
    体力自慢の女子生徒の走る音と戦闘員の怒号が、ロッカー越しに過ぎ去って行った。
    疲弊しきった精神と肉体は動きを止め、次第に意識は遠のいていくのであった。

    ━━━━━━━━━━━━━━━

    どのぐらい時間が経ったのだろう。意識が戻った橿原はロッカーの扉を少しだけ開ける。
    すっかり外は暗くなり、静まり返っている。叫び声も爆発音もなく、何事もなかったかのようにアカデミーは静寂に包まれている。

    あれは…夢だったのだろうか。

    そうだ、きっとそうに違いない。自分は試験前だから動揺しおかしな夢を見てしまったのだ。ロッカーで寝落ちしたのも、きっとそのせいだ。

    何もなかった。
    何も恐れるものはなかった。

    そう何度も言い聞かせる。落ち着くために。描いていた理想の世界を崩さないために。

    カツ…カツ…

    誰かが教室の外を歩いている。

    ガラッ…

    誰かが教室へ入る。

    (誰…?)

    ロッカーの扉が少し開けたままであることを忘れ、ぼうっと外を眺める。

    「…そこにいるのだろう」

    この声は。ずっと求めていた、大好きな声は。

    「あっ…!学長先生…!」

    バタンとロッカーを勢いよく開き、しかし同時に尻もちをつき倒れる。

    「いたっ…す、すみません…こんな時間まで教室に…勝手に居座って…え…?」

    目の前の足元を見る。そしてゆっくり、ゆっくりと目線を上げていく。

    「誰…ですか…?」

    目の前にそびえ立つ者は、平和を象る怪人であった。

    ━━━━━━━━━━━━━━━

    『おや…私が誰かわからないのかね、橿原君』

    緑と黒の仮面は大きな円を描き、神々しい葉の様である。

    「学長…先生…?」

    声は確かにピアス学長そのものだった。

    『そうだ。君はずっと、ここにいたのかね?』
    「は、はい…ずっと…寝てました…すごく…怖い夢を見て…」




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