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    自陣遺書屋の日常、自己満足二次創作。
    ただ春に散歩するだけ。

    春の一間 芭琉は戮と散歩していた。季節は春、桜があちらこちらで満開に咲いて、心地よい風が吹けば花びらが舞っていた。
    「いい天気だね、すっごく気持ちいい」
    「ね、桜も綺麗だし」
    なんて言葉を交わせばまた、とりとめのない会話を紡ぎ出す。2人は足を休めて桜を見ようと、川辺に沿って置いているベンチに腰を下ろした。

    「簡単なピクニックみたい」
    ほとんど何も持ってきてないけど、と芭琉が言う。実際、桜を見つつ散歩しようとしていたため、スマホと財布くらいしか持っていない。
    「今度お昼とか持ってきたいね、お弁当でもいいかも」
    隣でにこにこと微笑むのは戮。芭琉と一緒だからか、いつもより笑顔になる頻度が高い。春特有の水色の空に桜の淡い桃色、緑の草原の色合いも美しいが、戮の目に映るほとんどは芭琉が占めている。「綺麗だね」と戮が心からそう言えば芭琉も「そうだね」と風景を見ながら返す。芭琉はその対象が自身であることを半分自覚しているが、わざと間違ってやった。

    ふと、強めの風が吹いた。二人の髪の毛を揺らして、桜の花びらが舞う。その時、戮は隣にいる芭琉が霞んでいるように見えた。花びらが視界を過ぎったら消えてしまいそうな、そんなふうに儚く見えた。咄嗟に戮は、芭琉の腕を掴む。芭琉は、悲しそうな顔で突然腕を掴まれたことに目を丸くして驚きながらも、
    「戮?どうしたの?」
    と心配している。
    「……芭琉くんが、何だか消えちゃいそうな気がして。ごめんね、腕痛くなかった?」
    「大丈夫、全く痛くないよ。それに、俺は簡単に消えたりしないよ」
    戮がそばにいてくれるし、と目を細めて笑う。あぁ、どうしてそんなに優しいのだろう。どうしてこんなにも愛しいのだろう、と戮は掴んでいた手を離し、芭琉を抱き締める。
    「俺、絶対芭琉くんから離れないから。危険なやつから守って見せるから」
    「ありがと。戮のこと、誰よりも信頼してるからね」
    それから、と付け足して芭琉は
    「俺も、好きだよ」
    と戮の背中に腕を回しながら言った。耳元で言われ、嬉しさと恥ずかしさでじわじわと顔に熱が集まる感覚がする。

    ふと横目で芭琉のほうを見れば、芭琉も耳が赤くなっているのに気がついた。顔を見ようと離れて見ると、顔を俯きがちにして、目線を逸らしている芭琉の頬がほんのり赤くなっていた。
    「え、かわいい…どうしたの?」
    「戮みたいに、好きって言ってみたら、思った以上に恥ずかしくなっちゃって」
    戮が芭琉の頬を両手でそっと包むと、自然と芭琉の顔が上がり目線が交わる。目が合って柔らかく笑う顔をしばらく見つめる戮。数秒経って芭琉が堪えずに吹き出す。見慣れているはずなのに、また心臓の鼓動が早くなった。あぁ、この人は。いつまで経っても最高に愛おしい人なんだ、と戮は改めて思った。そう思っただけで自然と口角が上がって、自然な笑顔になる。芭琉の前だけ作られる素直な笑顔。そのまま芭琉の肩に寄りかかる。芭琉はそんな戮を受け止める。信頼。または、それ以上の感情があるのかもしれないが、それはまた別の話。
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