魔王様の貯金箱 赤井秀一が僕の城で暮らし始めて半年が経とうとしている。
この城は人間界から見ると深い森の中にある。
しかし実際に建っているのは魔界だ。森の中で人間界と魔界が接しているため、うっかり境界線を越えてしまう人間が稀にだがいる。
城の主が魔王だから魔界に建っているのは当たり前の話で、異例なのはそんな立地でありながら赤井が今日も元気に城の中の図書室で本を読んでいることのほうだ。
瘴気に当てられた様子はないので、なぜかと聞くと人と魔物の間に生まれた半人半魔なのだそうだ。
彼の父親の名前に聞き覚えはなかった。きっと僕が生まれるより前に魔界を出たのだろう。
魔物の中には魔界を出て人間界で暮らし始めるものもいる。
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