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    岩藤美流

    @vialif13

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    岩藤美流

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    みてみて~から始まるアズイデちゃん。久しぶりに書いたんで大丈夫か不安です。そんなつもりなかったのにイカちゃんの話になってしまいました

    ##アズイデ短編

    みてみて~から始まるアズイデちゃん「みてみて~、アズール氏!」
     先程まで、高い背丈を限りなく小さくしていたイデア・シュラウド。彼は被っていたパーカーのフードを脱ぐなり、いつになくハイテンションに、髪までふんわりと火力を増し……彼の表現法を借りるなら、「幼女」のように切り出した。
     その腕の中で大事そうに抱えられていたのは、ぷっくりとした愛らしい、「イカ」のぬいぐるみである。すでに眉を寄せていたアズール・アーシェングロットは、さらに眉間の皺を深めることになった。
     ここはオクタヴィネル寮内、アズールの部屋だ。二人はお互いでそう認識していないものの、世間一般には「恋仲」と呼ばれる立場にある。寮へ続く裏道を通り、これまた裏口からこそこそ入ってくるのも未だに慣れない様子のイデアは、毎度いつも以上に体を小さくしてやってくる。なんでも、髪でバレるのが嫌とかで、フードを目深に被っているものだけれど。
     そんな不審者が寮からつまみ出されない時点で、それがイグニハイド寮長イデアであり、またオクタヴィネル寮長と「良い関係」であると周知されていると何故思いつかないのか。いや、それはこの際おいておくとして。何故、よりにもよって、自分の部屋に「イカ」を持ってくるのか。
     言いたいことは山ほど有ったが、アズールは心の中で深呼吸をする。
    (落ち着け、フロイドのやることに比べればまだマシだ。イデアさんがよくわからないことをするのは、いつものことじゃないか)
     そう言い聞かせるアズールの前で、イデアは上機嫌そうにニコニコしている。なんだその顔は、と思いながらアズールは営業スマイルでイデアに問う。
    「おや、イデアさん。それはなんでしょう?」
    「おやおや~? アズール氏、まさかコレがなにかわからんのですか~?」
    「は、はあ」
    「コレはですね、イカちゃんです」
     そんなことはわかってるんだよ。喉まできたツッコミを呑み込んで、「そ、そうですか」と返せば、イデアはぬいぐるみをモニモニ握り動かしながら語る。
    「国民的人気ゲームのマスコットですぞ~? CMとかやってると思うんだけど、アズール氏ともあろうかたがご存知無い?」
    「……あぁ、もしかしてアレですか? 確か、イカになって魚を食べ、陣地を争う……」
    「そ~そ~! 小魚を食べるためにナワバリを奪い合うヤツですわ。そのマスコットちゃんですな。ゲーム知識がこれっぽっちもないアズール氏も知ってるとは、さすがイカちゃんですわ」
     いつになくニコニコしているイデアを見ていると、ただでさえ引っかかる言い方をされているわけで、ますます腹が立ってきた。
     いや、別にそのイカのゲームがなんだっていいのだけれど。どうしてよりによって、ここに持って来たのか。
     貴重な部屋デートの機会である。そこへ向けてタコの自分に対してイカのぬいぐるみ。わざとなのか、嫌がらせ、あるいはバカにされているのだろうか。
     次第に崩れ始めた営業スマイルのまま、アズールは少し声を低くする。
    「……イデアさん、わかってやってます?」
     試みに尋ねると、
    「へ? なにが?」
     と返事。心の底から「きょとん」という顔までしている。
     なるほど、無意識にデリカシーが無いだけか。最悪じゃないか。いやでも、前々からこういう人だったな、この人。
     そう考えると、腹を立てている自分が少々あほらしくなってきて。大きな溜息を吐き出すと、首を振る。
    「それ、イカなんですよね?」
    「そうですぞ? さっきからそう言ってるじゃないですか。手に入れるの大変だったんですぞ。なんせこれ、」
    「イデアさん」
     早口でなにか説明しようとするイデアに、アズールが口を挟む。
    「わかってます? こんなこと言いたくないですが……いや本当に言いたくないですけど」
    「うぇっ、な、なんですか⁉」
    「僕……タコなんですよ……?」
     そう言った瞬間、イデアはきょとんとした表情をした後で「っ!!!!!!!!!!!!」と彼とも思えぬ声量で叫んだ。
    「もっ、もしかして やっ、ヤキモチ焼いてます⁉」
    「どっ、……ど、どうしてそうなるっ」
     思わぬ切り返しに、動揺してどもった上に顔が熱くなった。
     そんなつもりで言ったわけではない、断じて。なのに、そう言われてしまえばそれも有るような気がしてきて、どうしてだか死ぬほど恥ずかしい。
    「そ、そうじゃないの⁉」
    「ち、違いますよ! ほら、僕はタコの人魚で……だからその……デリカシーに欠けるというか!」
    「ええっ⁉ アズール氏がタコなのに、イカちゃんのぬいなんて持って来たから怒ってるんじゃないの⁉」
    「だから、そうですけど、絶対あなた誤解しているでしょう! そうですけど、そうじゃないんです!」
    「で、でも」
    「でもじゃありません!」
     これ以上の議論を避けようとするあまり、母親のようなワードが飛び出てしまった。流石のイデアも、これにはたじろぐ。
    「うっ、うう、さ、さーせん……」
     しゅん、と髪までしおれている。普通、彼は間違いを指摘されてもつっかかったり屁理屈をこねて認めなかったりするので、これほど素直に謝罪するのは珍しい。それだけで、しっかり反省しているのはわかる。
     アズールは「ああいや」と慌てた。折角の機会に、喧嘩がしたかったわけではない。なんとこの場をおさめるか考えていると、イデアが小さな声で言う。
    「うう……だ、だって拙者はアズール氏のこと、タコの人魚だと意識したことはあんまりなくて……ああいや、これはアズール氏のタコ生を否定するとかそういうわけではなくて、拙者と致しましてはアズール氏に含まれるものは全部まるっとオッケーと申しますか」
    「……? イデアさん?」
    「だからその……僕にとってはアズール氏はタコとか人魚とかそういう以前にアズール氏で、つまり美人でがんばり屋でかわいいという認識しか無くてですな、」
    「イ、イデアさん」
    「イカちゃんがそんなアズール氏にとって地雷だとは本当にわからず……す、すんません、でもですな! 拙者アズール氏に最初に見せようと思って、遠路はるばるイグニハイド寮からこのぬいを抱えて、うっうっ」
    「い、イデアさんっ」
     これ以上褒め殺されては困る。アズールが頬を染めながら制止すると、イデアは不安げな上目遣いでこちらを見る。抱き潰してやろうか、とアズールは正直思った。
    「も、もういいです。そんなに、怒っているわけではないですから。ええと、その。ああ、はい、それで? どうしてもそのイカを、最初に見せたかったと?」
     デリカシーが無いだけで、悪意は全く無かったのなら、まあ愉快ではないが許せないこともない。アズールが問いかけると、イデアはまた「ぱあっ」と音がしそうなぐらい髪を燃やして言った。
    「そうそう、このイカぬい、限定販売でぜんっぜん手に入らなくて! すっごい抽選倍率ヤバくて、ついに当たって手に入れたんですぞ~! なんせこれ、フリマサイトではえらい高額で取引されてて」
    「……高額で、ですか」
     そのぬいぐるみにそんなに価値が? とアズールは顎に手を当てる。それを見て何を思ったか、イデアはぬいぐるみを隠す。
    「だ、ダメですぞ、高額転売しちゃ!」
    「人のことをなんだと思っているんですか。似たようなものを売り出せばいいと思っただけですよ」
    「海賊版! パクリ商品! ダメ絶対!」
    「冗談です。あなた僕のことなんだと思ってるんですか」
    「えっ、金の亡者……」
    「抱き潰すぞ」
    「ヒッ、さーせん!」
    「冗談です」
     次第に冗談では済まなくなりそうになってきているがそう言うと、イデアはまた上目遣いでこちらを見る。
    「じゃ、じゃあ、アズール氏の部屋に置いてくれる? イカちゃん」
    「……なんでそうなるんです」
     いい加減、頭が痛くなってきた。その問いにイデアは小声で答える。
    「だって、拙者の部屋にはアズール氏のカップが有るでしょ」
    「……え? その代わりってことですか?」
     あの高級ブランドカップとそのイカちゃんとやらを天秤にかけられているのか。アズールは面食らったが。
    「せ、拙者にとっては大事なモンですし、なかなか手に入らんモンでもあるし、好きなモンだから……。だから、つまり、その、ね? 同じように、その。アズール氏も僕にとっては……ああいや、アズール氏の部屋に置いて有ったら、嬉しいなって……」
    「…………」
     頭が、痛い。
    「……抱き潰す……」
     アズールは呟いて、イデアは小さく悲鳴を上げた。


     その後、アズールの部屋にイカのぬいぐるみが置いてあることを双子から大いにからかわれたことはまた別の話。
     

     
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    岩藤美流

    DONE歌詞から着想を得て書くシリーズ①であり、ワンライの「さようなら、出会い」お題作品の続きです。参考にした歌は「A Love Suicide」です。和訳歌詞から色々考えてたんですけど、どうも予想通りタイトルは和訳すると心中だったようですが、あずいでちゃんはきっと心中とかする関係性じゃないし、どっちもヤンヤンだからなんとかなりそうだよな、と思ったらハッピーエンドの神様がゴリ押しました。イグニハイド寮は彼そのものの内面のように、薄暗く深い。青い炎の照らしだす世界は静かで、深海や、その片隅の岩陰に置かれた蛸壺の中にも少し似ている気がした。冥府をモチーフとしたなら、太陽の明かりも遠く海流も淀んだあの海底に近いのも当然かもしれない。どちらも時が止まり、死が寄り添っていることに変わりはないのだから。
     さて、ここに来るのは初めてだからどうしたものか。寮まで来たものの、人通りが無い。以前イデアが、うちの寮生は皆拙者みたいなもんでござるよ、と呟いていた。特別な用でもなければ出歩くこともないのかもしれない。さて、寮長の部屋といえばもっとも奥まっている場所か、高い場所か、あるいは入口かもしれないが、捜し歩くには広い。どうしたものかと考えていると、「あれっ」と甲高い声がかけられた。
     見れば、イデアの『弟』である、オルトの姿が有る。
    「アズール・アーシェングロットさん! こんばんは! こんな時間にどうしたの?」
     その言葉にアズールは、はたと現在の時刻について考えた。ここまで来るのに頭がいっぱいだったし、この建物が酷く暗いから失念していたけれど、夜も更けているのではないだろうか。
    「こ 5991

    れんこん

    DONE第二回ベスティ♡ワンライ用
    フェイビリ/ビリフェイ
    お題「HELIOS∞CHANNEL」
    何度も何度も震えるスマホ、画面も何度も光って、最早充電も尽きかけてしまっている。
    鳴り止まなくなって電源ごと落としてしまうのも日常茶飯事ではあるけれど、今回は規模が違う。
    ……今朝おチビちゃんが撮ってエリチャンにアップロードした写真がバズっている。
    その写真は新しく4人の体制となったウエストセクターで撮ったもので……それだけでも話題性があるのは確かだけれど、それよりもっとややこしいことでバズってしまった。

    『フェイスくん、この首の赤いのどうしたの!?』
    『これってキスマーク……。』
    『本当に!?どこの女がこんなこと、』

    「はぁ〜……。」

    止まらない文字の洪水に、思わず元凶である自分の首を撫でさする。
    タグ付けをされたことによる拡散の通知に混じって、彼女たちからの講義の連絡も合わさって、スマホは混乱するようにひっきりなしに泣き喚いてる。
    いつもはなるべく気をつけているからこんなこと滅多にない。……ただ、昨夜共に過ごした女の子とはまだ出会ったばかり……信じて寝入っている間にやられてしまったらしい。
    今日はタワーから出るつもりがないから別にそのマークを晒していてもわざわざ突っ込んでくる 2313

    affett0_MF

    TRAININGぐだマンワンドロワンライ
    お題「天使の囁き/ダイヤモンドダスト」
    はぁ、と吐き出した息が白く凍っていく。黒い癖毛を揺らしながら雪を踏みしめ歩く少年が鼻先を赤く染めながらもう一度大きく息を吐いた。はぁ。唇から放たれた熱が白く煙り、大気へと散らばっていく。その様子を数歩離れたところから眺めていた思慮深げな曇り空色の瞳をした青年が、口元に手をやり大きく息を吸い込んだかと思うと、
    「なぁマスター、あんまり深追いすると危ねぇっすよ」
    と声を上げた。
     マスターと呼ばれた癖毛の少年は素直にくるりと振り返ると、「そうだね」と笑みと共に返し、ブーツの足首を雪に埋めながら青年の元へと帰ってきた。
     ここは真冬の北欧。生命が眠る森。少年たちは微小な特異点を観測し、それを消滅させるべくやってきたのであった。
    「サーヴァントも息、白くなるんだね」
     曇空色の瞳の青年の元へと戻った少年が鼻の頭を赤くしたまま、悪戯っぽく微笑んだ。そこではたと気が付いたように自分の口元に手をやった青年が、「確かに」と短く呟く。エーテルによって編み上げられた仮の肉体であるその身について、青年は深く考えたことはなかった。剣――というよりも木刀だが――を握り、盾を持ち、己の主人であるマスターのために戦 2803

    YOI_heys

    DONE第1回 ヴィク勇版ワンドロワンライ『ひまわり』で書かせていただきました!
    ひっさびさに本気出して挑んでみましたが、急いだ分かなりしっちゃかめっちゃかな文章になっていて、読みづらくて申し訳ないです💦これが私の限界…😇ちなみにこちらhttps://www.pixiv.net/novel/show.php?id=17839801#5 の時間軸の二人です。よかったら合わせてご覧下さい✨
    第1回 ヴィク勇版ワンドロワンライ『ひまわり』※支部に投稿してあるツイログまとめ内の『トイレットペーパーを買う』と同じ時間軸の二人です。
    日常ネタがお好きな方は、よかったらそちらもご覧ください!(どさくさに紛れて宣伝)



    第1回ヴィク勇ワンドロワンライ『ひまわり』


    「タダイマー」
    「おかえり! って……わっ、どうしたのそれ?」

    帰ってきたヴィクトルの腕の中には、小ぶりなひまわりの花束があった。

    「角の花屋の奥さんが、持ってイキナ~ってくれたんだ」

    角の花屋とは、僕たちが住んでいるマンションの近くにある交差点の、まさしく角にある個人経営の花屋さんのことだ。ヴィクトルはそこでよく花を買っていて、店長とその奥さんとは世間話も交わす、馴染みだったりする。

    ヴィクトルは流石ロシア男という感じで、何かにつけて日常的に花を買ってきては、僕にプレゼントしてくれる。日本の男が花を贈るといったら、母の日や誕生日ぐらいが関の山だけど、ヴィクトルはまるで息をするかのごとく自然に花を買い求め、愛の言葉と共に僕に手渡してくれるのだ。
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