キャンプウィルルオ 番外編2 引っ越し「ウィルナス、これはその……本気、なのかね?」
ル・オーは途方に暮れていた。
それもそのはず。引っ越し業者が来る三日前だというのに、ウィルナスの部屋はひとつも片付いていなかったのだ。ばかりか、溢れんばかりに荷物が有る。
「すまぬ、すまぬ。そのう。鼎はこう……細かいことが少々苦手で……」
ウィルナスはそう、気まずそうに呟く。その姿はまるで、イタズラが見つかった仔犬だ。しゅん、と上目遣いでこちらの様子を窺う姿に、ル・オーは呆れた溜息を吐き出した。
思えば。新居候補を見学に行った時から、妙ではあったのだ。
男ふたりが暮らすのだし、当面家族が増える予定も無い。2LDKで十分だろうと選んだ物件をル・オーはすぐに気に入った。お互いの職場の中間にあたり、周囲には生活に十分な種類の店もあるし、住居の周辺は静かだ。
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