釈迦に彼岸花その日はあまりにも突然に訪れた。
午前中はいつも通りの時間が過ぎて行き、そのまま平和に終わりさえすれば、特に記憶には残らない、取るに足らない一日になる筈だった。それが、丁度正午を少し過ぎた刻、ひっくり返った。
一人の信者の叫び声が館に響く。吹き抜けとなっている玄関先の階段下で声を上げたものだから、広い館にも関わらず大半の人間に声が聞こえた。
なんだなんだと大勢の信者が見に行くと、へたりこんで腰を抜かした女中のような階級の少女と、血塗れで息を引き取っている幹部信者の姿があった。
月島が唖然としていると、後ろから「どうした?」と、何処にいても聞き間違える筈のない声が聞こえる。
月島は何とかして隠そうとしたが、自分より身長の高い彼が相手では、そんなものは無駄な足掻きでしかなかった。
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