黒白「…………ん、」
ちゅんちゅん、と小鳥が囀る声。起こさないようにと気を使ってくれたのだろう、閉ざされたカーテンの隙間から僅かに漏れる陽の光から、朝が来たことを知る。
抱きしめて眠っていたはずの温もりはシーツからすっかり消えてしまっていて、ルイは思わずすんと鼻を鳴らした。いつまで経っても、目が覚めた時に彼がいないのは慣れない。だが扉の奥で控えめな鼻歌を歌う上機嫌な彼の声が聞こえるから、それに水を差すのも悪くてまた寝返りを打った。
「……ふんふん、ふふーん、ふーん」
音が鳴らないように控えめに開かれた扉。ぺたぺたと足音がするが、それも爪先からそっと足を下ろしているからか、耳障りには感じない。コトン、と枕元のベッドに何かが置かれた。そして間を置かず、ごそごそと彼がベッドに潜り込んでくる。
「……ふふ」
今日はやけに上機嫌だ。ルイの背にぴっとりとひっついて、まるで二人分の心臓がひとつになったみたいに、鼓動が大きく聞こえてくる。
「ルイ、起きてるだろ?」
「……気付いてたのかい?」
「オレは何でもお見通しだからな」
バレてしまっているなら隠す必要もない。改めて彼の方に向き直って、ぎゅっと身体を抱きしめる。
「おはよう、ルイ」
「うん、おはようツカサくん」
触れるだけのキスを交わして迎える朝は格別だ。わざと音を鳴らすキスも最初はあんなに恥ずかしがっていたのに、今となっては進んでやってくれるのだ。ほんの少し寝癖のついた前髪を撫で付けて、ルイは髪にもキスを落としていく。
「ん……くすぐったい」
ツカサも負けじとルイにそれを返していく。隙間から覗いた光が、ツカサの髪を照らして煌めく。
「……さっきは、何してたの?」
「ココアを淹れたんだ。たまにはこんなのも悪くないと思ってな。ちゃんとルイの分もあるぞ?思ったより熱くなりすぎてしまったから、ルイと引っ付いてる間に冷まそうと思って」
急に放り込まれた爆弾発言に、思わずルイは天を仰ぐ。ああもう、本当にこの子は!
「ツカサくん、朝から煽らないで……」
「喜んでもらえたなら何よりだ!それでは思う存分、イチャイチャしようではないか」
「――今日一日、離してあげられなくなるよ?」
「今日に始まった話じゃないだろう?それにオレも、今日はルイと引っ付いてたい気分なんだ」
そっと首の後ろに手が回される。寝起きでボサボサの髪に愛おしそうに口付けたツカサは、柔らかく笑った。
もう一度ココアを温め直すはめになったのは、わざわざ言うまでもない。