花吐き病ボイバグifルート 昼休み。何だか今日は陽の光でも浴びたいと思い、ボイドールは屋上へと向かった。珍しく人はいなかった______ただ1人を除いて。
「…ボイドール」
「………え」
誰もいないと思っていたそこに、バグドールは立っていた。
「……どうして…」
「…クラスの奴らから聞いた。不本意だったが、オマエが隠してた事もな」
「……」
「ボクはオマエを責めたいわけじゃない。…いつから、こんな事になってたんだ」
その声色はひどく優しかった。けれどボイドールには、何かひどく責め立てられているように感じた。彼は責めたいわけではない、と言っているのに。声も脚も手も震える。
「それ、は……」
「……別に無理して早く言う必要は無い。オマエから言ってくれるまでは、ここで一緒にいてやるから」
暫しの沈黙。耐えかねてボイドールが座り込むと、スッとバグドールが横に近づいて隣に座る。腕と腕が服越しに振れる。空の蒼が眩しい。ボイドールの口から真実が明かされるのにそう時間はかからなかった。
「………数ヶ月前、から…」
「…そうか」
多くは聞いてこなかった。それが彼なりの気遣いなのかもしれない。それが辛かったけれど楽だった。一見矛盾した2つの感情が、ボイドールの心の中に生まれた。
「最近、一緒にいる時間が減ったのもそのせいか?」
「……はい。だって……バレてしまったら…」
嫌われてしまう。それが何より怖かった。だから黙っていた。もう隠しても仕方がなかったから、何もかも包み隠さず話した。バグドールは最後まで、頷きながら聞いてくれた。
「…つまり、オマエはボクへの片想いを拗らせてこうなったのか」
「……ごめんなさい」
「謝るなって」
呆れたようにため息をついた後、バグドールから放たれたのは衝撃の一言だった。
「……『ボクも同じだ』って言われる可能性は?」
「……え?」
つい、ボイドールは俯き加減だった頭を上げ、目を合わせ、聞き返してしまう。バグドールの頬が少し赤くなる。
「っ…だから!ボクもオマエが好きだって可能性、考えたのかって…!!」
思わず目を見開くボイドール。その目の中に輝くのは涙か希望か。
「……わざわざ、言わせるな」
恥ずかしさからか目を逸らすバグドールと、大きな目をこぼれ落ちそうなくらい見開いたまま動けなくなっているボイドール。息を呑む音。みるみるうちに、嬉しさの涙が瞳を満たして頬を伝う。ボイドールはバグドールの胸に顔を埋めて泣いた。その嗚咽の中、最後に咲いた花は白銀の百合の花だった。これから先もずっと、この空の下で咲き誇らん事を願って、2人で多幸感に身を浸した。