冬、とある日常「さようなら、マッシュ先生!」
「おう、気をつけてな。また来週」
「押忍!」
稽古を終えた少年少女たちが、武道着のまま道場から駆け出していく。その背中をマッシュは微笑ましく眺めていた。
中心街から少し離れたところにあるこの道場は、地域に根差し長年の伝統を誇っている。今は、特に都市部では、ビルの一室を借りて経営している道場も多い。そんな中マッシュが指導員を務めているここは、めずらしく独立した土地と、規模は小さいながらも立派な建屋を持っていた。
もともと、マッシュはここで教えを乞う身だった。それが今は、師匠――道場主のダンカンから声をかけられ、こうして子どもたちに武道を教える立場になったのだった。
「さよなら、マッシュ先生。押忍!」
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