本物の「どういうことか、説明してくれる?」
久しぶりに聞いたジーク戦士長の声は、親しみやすく、それでいて冷たかった。相変わらずだ。僕は無理矢理唾液を飲み込んで、緊張でからからの喉を潤してから、答えた。
「マルセルとアニとライナーは、戻れません」
今のところ、僕とライナーの正体はばれていないが、何度も危ない橋を渡った。
トロスト区防衛戦では、マルコに僕たちの会話を聞かれそうになった。偶然近くの建物が崩落して会話がかき消されなかったら、彼を始末しなければならなかっただろう。
アニが捕まったのは一番の痛手だった。しかし賢明な彼女は自らを結晶に封じ込めて口を噤み、一切の情報を漏らさなかった。さらに幸運なことに、『僕たちの出身の山奥の村』の役人はかなり仕事が雑だったようで、ほとんど散逸していた戸籍資料からアニと僕たちが繋がることもなかった。
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