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    misaki_r_114

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    misaki_r_114

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    ポイピクテスト。レオカリ。謎設定。ハッピーではない。

    #レオカリ
    leocali

    残光「本当はわかってたんだ。オレは誰の一番にもなれない。オレには何にも無いんだって」
     産まれた時から跡取りの椅子を用意され、全てを与えられているはずのカリムはそう言って笑った。レオナはそれを黙って聞いていた。
    「信頼できる幼なじみがいるリドルが羨ましい。決して裏切らない従者のいるレオナが羨ましい。対等に付き合える友達がいるアズールが羨ましい。正直に褒めて叱ってくれる相棒がいるヴィルが羨ましい。警戒せずに心から愛し合える兄弟のいるイデアが羨ましい。暖かく抱きしめ合える家族がいるマレウスが羨ましい。羨ましくて、苦しくて、だからこそ壊れて欲しくないんだ」
    「だからお前が犠牲になってくれるって?」
    「それが一番いいってだけだ。オレが死んでも悲しんでくれる人はいるだろうけど、それでもちゃんと回るように準備されてるんだ。だから、大丈夫」
     誰かが犠牲にならなければ、世界が終わる。陳腐な物語のような現実で目の前の男は笑う。笑う。カリムは封蝋の押された封筒を差し出した。
    「レオナ・キングスカラー殿下。どうか、この遺言書の保証人になって欲しい」
    「……わかった」
     きっと、彼が死ぬことで彼の従者が咎を受けぬよう記してあるのだろうそれを懐にしまった。
    「カリム」
     名前を呼んで抱き寄せた。腕に収まってしまうような細く小さな身体にこの世界の全てがかかっている。
    「…………」
     お前を一番愛している、と言えたらどれだけいいだろう。けれど、それが不可能な事はお互いにわかっていた。
    「……ありがとう。レオナ」
     カリムの腕が背に回り一度抱きしめ返してきた。そして、ゆっくりと身体が離れる。
    「もう行くな」
    「ああ」
     カリムは死に、世界は救われて、きっと自分は責められるのだろう。どうして止めなかったのか、と。罵倒され、殴られるかもしれない。けれど、カリムが語った羨望と苦しみを教えてやるつもりはなかった。自分だけが知っていればいい。カリムは最期まで他人の幸せを願って眩しく笑って生き抜いたのだとそんなお綺麗な結末が似合いだ。それだって決して嘘ではない。
     
     小さく遠くなっていく背中をただ見つめていた。
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