Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    しぃー

    ☆quiet follow Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 13

    しぃー

    ☆quiet follow

    10年も前に呟いた♢の結城将司✕金丸信二の恋の一歩手前のおはなしを手直ししました。
    ただの妄想です。

    お題「制服」「雨」「ポーカーフェイス」お借りしました。
    shindanmaker.com/263068

    #将金

    濡れた制服、読めない想い「以上、これで委員会を終わります。解散」

     空席が次々と増え、教室から人が減っていく。
     金丸は椅子の背に引っかけた鞄をひょいと肩にかけ、伸びをひとつ。

    「は〜、終わった終わった……あれ、雨?」

     窓の外はいつの間にか灰色に染まり、細かい雨が降り始めていた。

    「うわ、マジかよ……傘持ってきてねぇし」

     近くにいた後輩・結城将司は、そんな金丸を一瞥し、黙って自分の鞄を手渡した。

    「……? なに?」

    「これ、持っててください。すぐ戻ります」

    「ちょ、おい、結城!? おまえどこ行くんだよ!」

     返事もなく、将司は校舎の奥へ消えた。

     3分も経たないうちに戻ってきた将司は、手に一本の傘を持っていた。

    「置き傘してたの、思い出して」

    「……言ってから行けよ、びっくりすんだろ」

    「すみません。先輩、入ってください」

    「あ、ああ。さんきゅ」

     何食わぬ顔で差し出された傘の中に、金丸はバツが悪そうに入り込む。
     ふたりで一本の傘に入るにはやや狭く、肩が少し触れ合う。
     金丸の右半身は傘からはみ出ていて、制服が濡れていた。

    「さんきゅ……おまえ、変なとこマメだな」

    「いえ」

     静かな返事のあと、しばらく無言で歩く。
     雨音と、足元の水たまりを踏む音だけが響いていた。

     不意に、将司が立ち止まる。

    「結城? どうした?」

    「……もう少しだけ、こっち寄ってもらっていいですか」

    「え?」

    「ちょっと……目のやり場に困るんで」

     そう言って、将司は金丸の肩にタオルをかけた。

    「っな、なんだよ」

    「右半分、けっこう濡れてるんで。透けてます」

    「は? 女じゃあるまいし、別にいいだろ」

    「いや……先輩の日焼けした肌の色って、なんか……えろくないですか」

    「……はぁ!?」

     金丸が声を裏返らせるのも無理はない。

    「……てめぇ」

     金丸は無言で将司の顔を見つめる。
     しかしその視線の先には、まったく悪びれない無表情がある。

    「……ポーカーフェイスのくせに、裏でそんなこと考えてんのかよ」

    「男は全員、多少はそういうとこあると思うんですけど」

    「おまえ、むっつりスケベ通り越して、オープンスケベだろ」

     顔が赤いのを悟られないように、金丸は小走りに傘の中から先に出る。

    「急に何言い出すんだマジで……!」

     後ろから将司が静かに追いつく気配。
     ちらと横を見ると、彼の口元に、いつもよりわずかに柔らかい線が浮かんでいた。

     笑ってる?……ように見えた。

    (なんなんだよ、あいつ)

     傘の下、距離は近いのに、将司の心の奥は読めない。
     それが逆に、金丸の胸をざわつかせた。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works