「はい、恭介」
「……何だ、これ?」
唐突に部屋に押しかけてきたかと思えば、可愛らしいシールで封をされた一通の手紙を引っ提げて、恭介の胸板にソレを押し付けた。
目前に立つ理樹はあからさまに「なんだも何も見れば分かるじゃない」とでも言いたそうな顔をして、一つ息をつきながら男性にしては控えめで小さな口を開いた。
「ラブレターだよ。恭介に渡してって、同じ学年の女子が」
「ふーん……名前は?」
「さぁ……違うクラスだし、一度も話したことないから」
「そうか。まあ、なんだ。わざわざ届けてくれたんだな。サンキュ」
そう言って恭介は己より数cm程低い頭をそっと撫でた後、理樹を部屋から見送った。
――ここから先、同じようなことが2年間続くことも知らずに。
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