Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    お茶🍵

    @yukiri_cya
    ジャンルごった煮になりそう

    ☆quiet follow Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 49

    お茶🍵

    ☆quiet follow

    ここから読んでもさっぱりなツイッタツリー芸の続き。

    【双子遊園地デート続き】


    あの時みたいに、フォルテは笑った。
    きっと、手を繋いでパークを爆走する双子はたくさん目撃されていて、今頃画像まで上げられているかもしれない。マネージャーにはきっと大目玉を喰らう。プロデューサーは面白がるかもしれないけれど。
    けど、こんな時真っ先にアシッドを嗜めるはずの兄が許したのだ。一緒に笑っているのだ。何もかもが、それだけでどうでもいい。
    比較的人通りの多い人気アトラクションの入り口。駆け込んで、「え、あ!?」と動揺しているスタッフの女の子が何か言う前にパスを見せて滑り込んで。
    平日の比較的空いている日でもやはり人気アトラクション、列は長く伸びていて、その横のパス専用通路をすいすいと進む。最早二人がいる事はSNSですっかりと話題になっているようで、その姿を認めた人々から声が上がるのにも全く目をくれず。
    走り通して肩で息をしてるフォルテの手をまだ引いているけれど、振り解かれることはない。足早に進みながらも、作り込まれたアトラクション内部に思わず感嘆が漏れる。
    「すごいね、こうなってんだ」「…えぇ、はぁ、並んでいる間も、は、飽きさせない工夫が、ふぅ、」「フォルテ体力無さすぎじゃね?」「キミに合わせてっ、無理に走ったっ、僕の方が、消耗するに決まってるでしょう!はふ、」
    そんな他愛もない会話を交わしながら先へ進むと、流石にパス専用通路とは言え行列に突き当たる。先に並んでいる人がギョッとした顔で振り返り、傍で大行列を上り詰めた人々もすぐに気付いてざわめき出す。
    ここで大騒ぎになったら、確実に退場させられてしまう。パークに迷惑をかけるつもりなどないが、でもやっぱり、乗りたい。二人で、乗りたかった。
    多分ファンの子なのだろう、比較的近くに並んでいた女の子のグループが、今にも大声を上げようとしていた。
    アシッドが、静かに人差し指を立てる。ざわめいていた場が、しんと静まり返る。
    「ごめん、見逃して?お兄様がこれにどうしても乗りたいって言うからさ」
    女の子達が、大声をあげるつもりだったろう口を慌てて塞いでくれる。
    「ちょっとアシッド!君だって乗りたがってたじゃないですか!」「えー、そうだけど別に嘘は言ってなくね?」「人をダシに使うなと言ってるんです!」
    案の定、フォルテが噛み付いてくる。ぷりぷりと怒りながら、それでも自分も乗りたかったという事実は否定しないから、目の前の女の子達だけでなく、その他にもちらほらと二人のやり取りに悶絶している人がいる。全くもってアシッドの思惑通り。
    「あ!見てフォルテ、あんなとこにニッキュがいる!」「話を逸らさ──ほんとだ。隠れニッキュってやつですかね」「あー、ニッキュの耳一緒に落としてきちゃった。オレに似合ってたのになー」「そうですねー」「フォルテにもぜってー似合うのに、次は付けてよ」「断固として拒否しますしまたこんな騒ぎになるのはこりごりです」
    きっと聞き耳を立てられているし、視線はザクザクと感じるし、写真も撮られているかもしれない。それでも皆、騒いだりはせず、二人を見逃してくれるらしかった。せめてものお礼に、兄の可愛いところを少しだけ見せてあげてもいいと思いながら、ダラダラと会話を続ける。
    「浮き輪まんおいしかったね」「あぁ、あのジュースも飲みたかったな…」「トロピカルアタッチメントジュースでしょ、ストローだけ咥えて飲むやつ」「あれも君に似合うんじゃないですか、馬鹿っぽくて」「まぁねーオレにかかれば何でも様にしてみせるし?」「本当になりそうだから腹立つ」
    今日はずっとパークの雰囲気に当てられて、フォルテも随分ゆるくなってしまっている。口調すら二人きりの時のように砕けていて、ちょっとこれ以上見せるのはサービスしすぎかな、と思ったところでようやく列の終わりが見えて来た。
    乗り場のスタッフにもびっくりした顔をされて、けれど流石はプロ、笑顔で対応してくれる。ゴンドラの一番前に二人で乗り込む。ここまできて、ところでこれ落ちないですよね、なんて言うフォルテには曖昧に笑っておいた。途中で写真撮るとこがあるよとだけ告げて。
    乗り合わせた人たちもいるけど、大衆の視線から解放されたことでもう随分肩の力が抜けた。
    「降りたらどうしようね、フォルテ」「どうしましょうねぇ、出口まで通してくれるかな。」
    二人でクスクス笑う。二人で悪戯をして遊んでいた小さな頃を思い出す。そのあと施設の人にこっぴどく怒られたっけ。マネージャーにも、あの時みたいに叱られるのだと思うと更に面白くなってしまって、乗っている間ずっと笑っていた。

    「嘘つきぃぃいいいい!!!!!!!」

    落ちた途端、フォルテは絶叫してたけど。


    「嘘つき。馬鹿。馬鹿愚弟。信じられません。」「だぁからぁ、オレ別に嘘ついてないじゃん」「知ってて黙ってたなら同罪です。馬鹿。馬鹿アシッド」
    アシッドを罵りながら、その腕にがっしりとしがみついたままの兄ごとゴンドラを降りる。あーあ、そんな可愛いことして、みんなに見られてるよ、とは言わないでおく。大サービスだかんね。
    流石人気アトラクション、滅茶苦茶楽しかった。フォルテのリアクションも面白かったし。
    問題はここから。間違いなく二人がここにいる事は知れ渡っていて、パークを出るどころかまずこのアトラクションからすんなり出られるかどうかも怪しい。
    スタッフの手も借りて、流石にいい加減脱出しないと。でもその前に。
    出口を進むと開けた空間にたどり着く。モニターがいくつか並んでいて、そこに似たようで違う写真がいくつも並ぶ。
    その中に、満面の笑みでピースを決めるアシッドと、そんな弟にしがみ付いて目をギュッと閉じたフォルテの写真。まだ不機嫌にブチブチと文句を垂れているフォルテが気づかない内に、カウンターへ行き購入しておいた。
    まるで普通に、こんな風に遊べる日が来るなんて思わなかった。
    まぁ、実際「普通」ではない二人だから、ここからが大変なんだけど……と思っていると、スタッフが数名、声をかけてくる。「こちらです」と案内されたのは非常用の通路らしく、二人の現状と騒ぎをバッチリ把握しているらしいパーク側が配慮してくれたらしかった。
    案の定、アトラクションの出口は出待ちの人でごった返していると聞き申し訳なく思う。非常口を抜けると、その先は人気が無く、待機していたのは人気キャラクター「バウル」を模したバスが一台。これで出口まで送り届けてくれるらしい。流石夢を叶えるRPGの国、こんな迷惑客にも神対応。
    外からは見えない位置に乗り込んで、そのまま園内を一周までしてくれたので、非日常の風景を二人だけで堪能してパークを後にした。


    案の定、マネージャーにはたっぷり説教をもらい。
    改めてパークのCMの依頼を引き受けたのは、また後日の話。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💖💖❤🙏😭
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works