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    お茶🍵

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    お茶🍵

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    ア●ジャッ●ュな会話を繰り広げるニゴイチ(Γ2×1)

    「1号ズルい! 勝手に強くなってズルい!」
    「仕方ないだろう、喚くな」
     ズルい、ズルい。まるで鳴き声のように一つ覚えに繰り返す2号を、1号は呆れを隠すことなく顔に浮かべて見下ろしていた。
     かすかに紫煙を上げる光線銃を下ろし、無駄のない動作で腰元のホルダーへと収める。そうして、少し浮いた位置から2号の立つ地面へ降りる間も尚、ズルい、と鳴き声は続いていた。
     なんてことはない、光線銃の性能がやや上がったというだけのこと。試作品であるそのアップデート版を充てがわれたのが、番号の若い1号であったというだけのことだ。
    「試作を二つも作るのは手間だということくらい分かるだろう。特に問題は無かったから、すぐにお前の分も出来上がる」
    「でも」
     ぷく、と2号が頬を膨らませる。ほとんどが金属でできているこの身体において、他より弾力のあるその部位が、2号の情緒に合わせて柔軟に形を変える。
    「ボクのが出来るまでは1号の方が強くなるじゃん」
    「まあそうだな」
    「そんなのズルいっ!」
     まだ鳴くか。
    「だってボクたち同一個体なのにー! あとフツーに1号の方が性能上がるの悔しいしボクの攻としてのプライドが、」
    「せめ?」
     聞き慣れない単語に、1号はつい取り合う気のなかった言葉の端を拾い上げてしまった。するとどうだろう、2号は慌てて口元を両手で覆ったかと思うと、不自然な咳払いをひとつ。
    「あー、んんっ、ごめん何でもない」
     粗雑な誤魔化しに、1号はそれ以上追求することはせず、また変な言葉を覚えて、とただ肩をすくめたのだった。



    ◇◇◇


     とはいえ気になってしまった。
     1号と2号はいわゆる恋人という間柄である。これは2号から言い出したもので、恋人とは何か、どういう条件が整えばなる間柄なのかをプレゼンされ、なるほどならば私たちは恋人だな、と1号が頷いた日からそうであった。
     なってみてから、これは軽々しく頷くものでなかったと気付いたりもしたが、その頃にはもう、1号もこの関係の心地よさから抜け出せなくなっていた。
     恋人となってからは、更にその先があるのだと聞かされた。恋人となってからすること。囁く言葉。どこかから仕入れた知識を、2号は度々1号に実践した。
     抱きしめたり、キスをしたり。好きだと言ったり、かわいい、とか。思い返すと何やら胸部の駆動音が増した気がしたので、一旦思考をリセットする。
     気になってしまった。先程の言葉も恐らくは、2号がどこぞで手に入れた知識の一環である。
     プライドがどうのと言っていたが、どういった文脈なのだろう。自由にしていい、と許可されているヘド博士の本棚から、1号は分厚い辞書を取り出す。
    「せめ、せめ……あった」
     薄い紙を千切ってしまわないように、繊細な手つきでページを捲る。目的の単語を、黒皮に包まれた指先で辿った。
    「攻撃して利を得ること……対となる語は守り……? 攻守、中でも攻撃を重視したいということか? 2号は戦闘の話をしていたのか」
     なるほど、とようやく理解が及ぶ。1号は辞書を閉じると丁寧に元の位置へと戻した。
     同じことばかりを喚くので取り合わなかったが、きちんと真面目に戦闘について考えていたのであれば態度を改めなければならない。
     早速2号を探すべく、1号は扉をくぐり出た。



    ◇◇◇


    「2号」
     2号はほどなく見つかった。わざわざ探さずとも位置センサーで分かるのだが、使う前に見つけられたことに拍子抜けする。ただなんとなくここかな、と、確か人間はそれを〝勘〟と呼んでいた。
    「1号、なに?」
    「先程の攻めとしてのプライド云々という話だが」
    「ほぇ!?」
     まさか掘り下げられると思っていなかったのだろう。2号は見事に裏返った声で反応してみせた。下手に誤魔化したくらいだから触れられたくなかったのかもしれないが、生憎もう話題に出してしまっている。
    「えー、あー、言ったかなそんなこと……なあに?」
    「お前はそんなにしたいのか?」
     戦闘が。戦闘で攻撃を重視することが。
    「えっっっっっっっっっっ? それは、そうだけど、えっ」
     たかがそれだけのことに、2号は大袈裟に目を見開いた。真意を図るかのような目付きで、こちらを伺っている。
     ちょうど戦力差がついてしまったことで戸惑っているのだろう。だが銃の性能が上がったくらいでは楽勝とも言い難い。なんと言っても相手はこの2号なのだ。1号にとって不足は無い。
    「なるほどな、では私が相手になってやる」
    「いいの!!?!?」
     やはり大袈裟に2号は声を上げた。戦闘訓練くらいいつもしているだろうに、と不思議に思う。
    「もちろんだ。やるからには本気でいかせてもらうぞ」
    「む、むしろボクがイかせたいっていうか……! 嬉しいな、1号がそんなに乗り気なんて」
     はて、私が戦闘訓練に乗り気でないことなどあっただろうか、と1号は首を傾げかけたが、些事と判断して聞き流す。
    「早速するか、どこがいい?」
    「えっめちゃくちゃ乗り気……」
    「表の広場がいいか」
    「待って」
     広場に進みかけた1号の腕を、すぐさま2号が掴んで制する。
    「なんだ」
    「えっ、1号ってそういう趣味があったの」
     趣味とは何の話だ。趣味で戦闘訓練をやっているのではない。遊びじゃないんだ、とやや嗜めるように1号は2号へ語りかける。
    「私たちが本気でしたら周囲にもある程度影響が及ぶだろう?」
    「どんだけ激しくするつもりなの!?」
    「むしろ激しくしないのか、プライドがどうのと言っておいて」
    「いやそれは言ったけどさ!? ちょっと色々想定外すぎて、いや嬉しいのは本当なんだけど」
     モゴモゴと言葉尻が萎んでいく。一体何なんだ。戦闘訓練を前に、2号は人差し指を胸の前で突き合わせ1号を上目で見上げていて、全く闘志が感じられ無い。
    「何をクネクネしているんだ……ところでするなら服装はこのままでいいのか?」
     今も身に纏うヒーロー然とした服装は、それはそれで戦闘用に誂えられているが、訓練の度にボロボロにしては博士に申し訳ない。そう思っての提案はまたしても、2号の目を白黒させたようだった。
    「まっっってコスプレまでOKとか聞いてない」
    「コス……?」
     先程からどことなく話が噛み合っていない気はしている。しているが、だからといってすることは変わらない。戦闘訓練だ。
    「まぁでもこのままでいいか。さっさとするぞ」
    「ひぇっ。ほ、ほんとに外でするの?」
    「? 屋内でするものだったのか?」
    「外がデフォはヤバいでしょ」
    「ならどこで……」
     確かに地下に戦闘用のシミュレーションルームはあるが、そこでしようということだろうか。1号がそう口を開く前に、その身体は2号の腕の中へと引き寄せられた。
    「あーもう、初手アブノーマルすぎてびっくりしちゃったけど今回はフツーにシようよ、ね?」
    「フツー……?」
     異様な近さには目を瞑るとして、フツーの戦闘訓練、をする為に屋外の広場を提案したのだが。1号は今度こそ首を傾げた。
     思考回路を司るメモリーに疑問符が駆け回っている1号の、聴覚器官に相当する部位へと、2号は口を寄せる。
    「……ボクたちの部屋、いこ?」
     1号のあられもない姿、誰かに見られるのボク、やだなぁ。
     あるいは、そこまで口にしていたならば最後まですれ違わずに済んだのかもしれない。
    「そんな狭いところでするのか?」
    「〜〜、だからどんだけ激しくするつもりなのっ!!」
     もういいから黙って、と腕を絡め取り1号が引き摺られていった先、二人の自室として当てがわれた個室。
     入るなり抱擁、そしてキスをされ、1号が目を白黒させている内に、先程の会話の噛み合わせを正す暇もないままに、2号との濃厚な戦闘訓練(隠喩)をする羽目になったのである。


    「ね、次は1号の希望通り外でする?♡」
    「な……公序良俗に反する!!!!」
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