残業本部の地下、薄暗い部屋に掛けられた薄型テレビには、ハワイの真っ青な空と弾ける波、ダブルレインボーが次々と映し出されていた。チカチカと輝く原色の画面が眩しくて、チンはそこから目を逸らすと盤面を睨む。
「自分の番だって忘れちゃった?」
「忘れてないよ」
もじゃもじゃの髭面を一瞥して、さっとコマを動かした。ナイトを右へ。
「うん、そうくるか。じゃあ」
すかさずルークでナイトを取られ、チンは腕組みをして呻いた。
「……やるねぇ」
「まぁ、前から得意だしね。チンは弱くなった?」
「なんだって? 俺だってまだそんなに鈍ってないぞ。これでどうだ」
クイーンで睨みをきかせながら、ポーンを前へ。
「だめだめ、そんな様子見の手じゃ。これでチェック」
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