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    距離は近いけど付き合ってないし明確な告白はしてない

    こたつでみかんなノヴァアル「本当だ、珍しく人いないね」
    「だろう? アルクはお正月のときはおそばとかおせちの用意であまり入れないだろうから」
     だから誘ったんだ、と柔らかく微笑むノヴァにアルクはありがとうと返す。
     ノヴァに誘われやってきたのは星見の街のこたつのある部屋。
    「こたついいよね、あったかいしゆったりできるし」
     靴を脱いで部屋の中に入れば早速こたつの中へとすぽんと入り込むアルク。
    「みかんもちゃんとあるし、冬になったなって思うな」
     こたつのテーブル部分の上にはかごに入ったたくさんのみかんもあり、早速みかんを1つ手に取り皮を剥く。
     するとふわりと漂うみかんの香りに思わず笑みがこぼれた。
    「うん、甘くて美味しい」
     皮を剥いて現れた白い筋も丁寧に取り除き、ぱくりと一口食べると甘酸っぱい味が口の中に広がる。
    「お邪魔するね」
     何故かノヴァは他の三辺が空いているのにわざわざアルクのとなりに入ってきて、途端にこたつの中は狭くなりお互いの顔がぐっと近づく。
     その距離の近さにどきりと胸が高鳴ってしまうが、それを誤魔化すようにアルクはこたつの中のノヴァの足を軽く足で押した。
    「なんで隣なのさ、狭いよ」
     するとノヴァはそれすらも楽しいのかくすくすと笑っている。
    「ここがいいんだ」
    「変なの」
     そういうとアルクはこたつの中で足を伸ばした。追い出すほど嫌でも苦しくもないしノヴァの足は当たるが気にしない。
     ノヴァは足を伸ばしてくつろいでいるアルクを見ながらふっと表情を和らげた。
    「最近ノヴァ、近いよねなんか」
    「嫌かい?」
    「嫌じゃないけど……甘えたい?」
     甘えたいという言葉にノヴァは少しだけ反応し、そしてこたつの中で伸ばしていたアルクの足に自分の足を絡める。
     アルクが拒絶しないなら絡めた足をそのままに、ノヴァはこたつの上にあったみかんを手に取ると皮を剥き始めた。
    「それもあるかな」
    「あまえたがりになっちゃったなぁ……」
     アルクが剥いていたように丁寧に白い筋を取り除き、その白い筋も全て取り除いてからノヴァは一房つまみあげ、それをアルクの口元に差し出す。
     少しだけ甘酸っぱい香りを漂わせるそれにアルクは困ったようにみかんとノヴァの顔を見た。
    「えっと……」
    「食べさせてあげる」
     ノヴァの言葉にアルクは照れつつも口を開け、ノヴァはアルクの口にみかんを入れる。
     もぐもぐとみかんを食べるとやっぱり甘酸っぱい味が口に広がり、そしてこたつの中だからか少しだけ体が熱くなったような気がした。
    「美味しい?」
    「うん……」
     こたつの中のこのあたたかさも、甘いみかんも、そしてなによりもノヴァが隣にいるのも。
     すべてが甘くて暖かくて、心地いい。
     これが女の子にされたのならもう少し動揺が勝ったが、同性であり仲間であるノヴァにされたことだと思ったより動揺はなかった。
     そして何事もなかったように己が剥いたみかんをひょいぱくとスナック菓子のように自分の口に入れるノヴァを見て、気にするほうがなんだか馬鹿らしい気がしてくる。
    「ノヴァってほんとは、あまえたがり?」
    「君にだけね」
     言えばノヴァはアルクの肩へと腕を回して、ぐっと自分へと寄せてくる。
    「嫌かい?」
     アルクが反応するより早く耳元で囁くように言われる言葉にアルクはノヴァに回された手を見て、少し悩んだがまあいいかとその腕を受け入れる。
    「嫌じゃないよ」
    「今日のアルクはちょっと素直だね」
    「そうかな」
     ノヴァに言われるままに甘えさせていることは自覚しているし、確かに普段の自分ならこうしてはいない。
     でもなぜか今だけはこうやっていたいと思ってしまうのだ。
     多分このあたたかさがこうしてもいいかなという気持ちにさせるのかもしれない。
     しかしアルクが余裕持って対処できたのはここまでだった。
    「アルク」
     呼ばれて顔を上げればノヴァと目が合う。
     そしてノヴァはひな鳥のように口を開けてアルクがまだもっているみかんを食べたいとねだってくる。
    「自分で食べなよ」
    「食べさせて」
     ここまで甘えたがりだったかなとアルクは少しだけ心配になったが、甘えられるのが嫌ではないどころか何故か嬉しいのでついつい甘えさせてしまう。
     仕方ないなぁと言いながらみかんをノヴァの口元へと持っていくとぱくりとそれを食べ、そしてアルクに甘えるように頭をすり寄せてくる。
    「アルク……」
     甘い声で名前を呼ばれ、その甘さにくらりと一瞬目眩を覚えた。今の今までこんな声でノヴァから呼ばれたことはない。
     肩に回った腕はそのままでノヴァの空いていたもう片方の腕により気づけばアルクはノヴァに抱きしめられていた。
    「ノヴァ……?」
    「まだみかん食べたいな」
     甘えるように言われ、アルクはドキマギしつつ再びみかんを剥き始める。
    「はい」
     先程と同じように口元へと持っていけばぱくりとそれを食べ、そして甘えるようにすり寄ってくる。
     その甘え方がまるで恋人に対するようなものに思えて、アルクは少しだけ心臓がうるさくなるのを感じた。
    (な、なんだろうこれ)
     アルクはこの甘い空気に動揺する。これは甘えたがりと言うよりは別の何かではないか。
     こたつからの熱も相まって頭がくらくらしてくる。
     ノヴァが甘えてくるのは嫌ではない、むしろ嬉しい。だけどこれはなんか違う気がする。
    「アルク」
     変わらず甘い声で名前を呼ばれ、その甘さにくらりとしかけるとちゅっと自分の頬にノヴァの唇が触れるのを感じた。
     そしてすぐに離れたかと思うとまた違う場所、額にキスをされる。
    「えっ……」
     一瞬思考が停止して、何をされたのかを認識する。キス、されているのだ。
    「な、なに!?」
     流石に何が起こっているのかを把握してアルクは慌てた。
    「キスしたくなったんだ」
     あわあわと慌てふためくアルクにノヴァはくすりと笑うと、またちゅっと額に口付ける。
    「なっなにしてるの!?」
    「可愛いなぁって」
    「かわ……」
     星見の街に来てから数年経っているがからかうように年上から可愛いと言われたことはあったアルクだが、こんな風に可愛いと言われたのは初めてだった。
     不思議と嫌な気持ちにはならず嬉しいような恥ずかしいようなむず痒い気持ちになる。
    「っ、みかん、食べるんだろ!」
     このままでは更にキスをされてしまう、既にいっぱいいっぱいなのにこれ以上されては堪ったものじゃないとアルクはみかんをノヴァの口に押しつける。
     するとノヴァはまたぱくりと食べ、そしてこたつの中で足を絡めてより密着してきた。
    「ちょっ……みかん、みかんまだあるから!」
     ノヴァは口寂しいのか、こうなったらキスさせる暇なくみかんを食べさせるしか無いと混乱した頭は頓珍漢な結論を出す。
     そもそも何故いきなりこんなことをしてきたのか。これではまるで、思い浮かんでしまった推測を否定しようと必死にみかんを食べさせながら脳をフル回転せた。
    (……そうだ、きっとこれはナンパの予行練習だ、夏にしそこねたみたいだし!)
     明らかに無理のある推測だがアルクは必死にそう考える。
    「アルク」
     甘えるように名前を呼ばれ、その甘さにくらりとしながらアルクはノヴァの口にみかんを持っていく。
     ノヴァから見てもアルクが混乱しているのは見て取れているのか微笑ましそうに見てから、形に回した腕に力を込めた。
    「もうさ……アルクごと食べちゃっていいかな?」
    「はい、ダメです」
     いきなり打ち込まれた怪しい発言もなんとか平静を装いアルクは即答する。
    「ええ~どうしてダメなの……?」
     しかしノヴァはしょんぼりとした表情で聞き返し、より腕に力を込めた。
     正直ノヴァのそういう顔に弱いのは実感しているがここは流されるわけには行かないと気丈に対応する。
    「~ッ! どうもこうもないっ!!」
     ぐいぐいとみかんをノヴァの口へと押し付けながらアルクは身動ぎしてノヴァの腕の中から抜け出そうとした。
     しかしノヴァはがっちりと腕でアルクの体を捕まえると、逃げられないようにぐいっと引き寄せる。
    (僕でナンパの練習するのやめよう!?)
     叫びそうになった言葉はなんとか胸中にとどめ、とりあえず剥いた分のみかんを食べさせて今日はもう逃げようとノヴァの口にみかんを押しつけると、その指ごとノヴァは食んだ。
    「ひっ!?」
     思わず手を引くが逃さないといわんばかりに手首を掴まれる。
    「ノヴァ……っ!」
    「アルク」
     聞いたことないような甘えるような声で名前を呼ばれ、その甘さにくらくらする。
    (まずい、このままだと流されちゃいそう!?)
     羞恥で爆発しそうなアルクではあるが、嫌悪感はなく逆にノヴァへの感情を自覚してしまいそうになり、思わずぶんぶんと頭を振ってその考えを振り払う。
     しかしいくら否定しようにも今まで以上に熱が顔に集まってくるのがわかり、もう限界だと思った時。
    「あ、アユムの靴あんじゃん」
    「やっぱりアユムくんもこたつ楽しみたいんだろうね」
     扉の方から聞こえてきたのはアルクの友人であるショウタとユキの声で、二人共こたつに暖まりに来たのだろう。
     このままではノヴァの腕に閉じ込められている様を見られるのは確実であり、それを避けたいアルクは全力でノヴァを突っぱねる。
     そしてノヴァが何か言う前にこたつから脱出して全力で扉へと向かった。
    「あ、アユム」
    「顔真っ赤だよ?」
     ちょうど部屋の中に入ってきた二人とすれ違うようにアルクは靴を履く。
    「の、ノヴァがみかんかなり食べたから補充行ってくる!!」
     言い訳じみた説明を叫べばアルクはばたばたと部屋から走って出ていった。
     その背を見送りながら残されたユキとショウタはアルクのその様に少し驚く。
    「なんか様子おかしくない?」
     ショウタの言葉にユキは先ほどのアルクの顔を思い出していたが、こたつで暖まった後だからか顔が赤いのもおかしくはないといえばそうだろう。
     不思議に思いながらも二人はこたつへと視線を向けるとノヴァが丁寧にみかんの皮を剥いているのを見た。
    「……もしかしてお前なんかした?」
    「ただアルクと仲良くしてただけだよ」
    「それにしてはアユムくんずいぶん顔が赤かったけど」
    「ふふ、可愛いよね」
    「……お前まさか……」
     ショウタの冷たい視線にもノヴァは動じずに黙々と上品にみかんを食べる。
    「よくわからないけど、私アユムくん心配だから見てくるね」
     ユキは駆け出していったアルクを心配してそのまま部屋を出ていった。
     残されたショウタはなんとも言えない顔をしつつ靴を脱いで、ノヴァの対面上の位置に座りこたつに入る。
    「アユム、むっつりとは言え今どき珍しく初心だから手加減してやれって」
    「だけど僕は他の子達と比べたら出遅れているからね、まずは意識してもらおうかなって」
     反省の欠片も感じないノヴァの態度にショウタは呆れたようにため息をついた。
     そして自分のみかんの皮を剥いては口に放り込みつつ、じとりとノヴァを見る。
    「俺嫌だかんな!? アユムからお前の愚痴とか聞かされるようになるの!!」
     もっとうまくやれ、とそうショウタは叫ぶ。
     しかしノヴァはにっこりと微笑むだけで、ショウタの心からの叫びなど無視して再びみかんを食べるのだった。
     
     
     
     
    「アユムくんなんで水の中浮かんでるの!?」
    「……少し冷静になりたくて……っくしゅ!」
    「星見の街だって冬は寒いんだからすぐ上がろうよ!?」
     いつぞやのホワイトフェスのときのように水辺に飛び込んで案の定後日風邪を引いたアルクだった。
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