[虎兎]暗渠の恋 本日最後の仕事は二人別々の場所で、となっていた。僕がゴールドで虎徹さんはシルバー。だが層は違うものの、先日訪れて気に入ったブロンズのバーの近くだったことに気付いて、今晩は夕食を摂りがてら飲もうということになった。
まだ雪もちらつく季節だし、店の中で待ち合わせても良かったのだが、場所がうろ覚えだなどと言い出した彼を待ち、連れ立って行くことにした。
ブロンズへ降りて賑やかな通りから一本入り、待ち合わせに指定したショウウィンドウの隣に立って中を覗いたりしながらしばし待つ。ゴールドに比べると明かりも何となく少なくて、僕がほとんど普段のままの姿で立っていても目立たないみたいで嬉しい。
ふと顔をあげると、隣のビルとの間に橋が見えた。薄暗い街灯に照らされたそれは、大きくもないが明らかに欄干で、こんなところに川があったろうかと脳内の地図をひっくり返していると、その橋の向こうに「おおい」と手を挙げながら待ち人がやって来るのが見えた。
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