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    BNC_AOT

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    トロスト区ぶらりひとり散歩
    なんでも無い話 文章書くの苦手ですが漫画にするのも億劫だったので

    その日はよく晴れていて、一応と羽織った上着が邪魔になってしまうほどの暖かさだった。

    同期の中でも身長が高い彼は脚が長かった。
    誰かと歩くときは無意識に歩幅を相手に合わせていたが 今日は1人。
    普段より少し速い速度で市場を歩けば最近少し短くなってしまったズボンの裾から生暖かい風が入る。

    今朝収穫された果物や焼きたてのパン、塩漬けされた小さい干し肉がぶら下がってたり(今や高級だ)食器などが売っているのが見えた。
    店主と世間話をしながら自分の子供がどこかへ行かない様に手を握る母親、仕事の合間にこっそり酒のつまみを買う駐屯兵、タバコをふかしながら新聞を読む男、その男とはどういう関係かわからない隣の女。
    平日の昼間ながらそこそこの賑わいがあった。話の内容は意識を集中しないとわからない程度の人間の音に包まれている。



    「明日のことなんだが、すまん 雑用を回されたから俺は行けない。」
    「あ.......そう、わかった。」
    「別のやつに任せようとしたが...」
    「うん、わかったよ。」
    「調整日は別にもらえるらしいが...」
    「うん、わかった。1人で大丈夫だ。」
    「....ああ。」



    市場を抜けるとウォールローゼの突出部分の壁にたどり着いた。
    5年前までは内地だったここも今や最前線だ。
    この壁の向こう側には巨人がいるかもしれない。

    ......。


    彼は壁に沿って歩いていく。

    1人でいることは久しぶりだと彼は歩きながら考えた。
    (今、ここにたくさんの人がいるのに僕を知っている人は誰もいない。)

    少し暑いな。

    2-3年ほど前までは上着を脱ぐ時、左腕に手をかける動作をしていた。いまはそんなことはしない。
    脱いだ上着には剣のマークもない、なんの変哲も無い無地のもの。
    誰にとっても誰でもない、ただの背の高い少年である自分は少しだけ居心地が良かった。




    「おう、帰ってたのか。.......街はどうだった。」
    「ああ。人がたくさんいて賑やかだった。..帰りも迷わずすぐ戻れたよ。」
    「そうか。」

    逃走経路の下調べを終え宿舎に帰った彼はベッドに横たわり、数日後の計画を頭のなかで再生しながら目をそっと閉じた。
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