夕食も済んで、明智は一息ついていた時だった。
「明智!今日はなんとデザートがあるんだ」
同居人の蓮は上機嫌にそう言って、ごそごそと冷蔵庫から何やら箱を取り出した。
ケーキの箱よりも二回りほど小さく平たい。上質そうな白い紙の箱に、金色の文字でフランス語が書かれており、シンプルな装飾ながらも高級な品だとわかる。
「どうしたの、これ…。ああ、バレンタインか」
「そう!だからデパートの催事場で良さそうなチョコ買ってきた。俺からの本命だぞ」
人脈が広く、いろんな人から信頼されている蓮のことだから、てっきり誰かから貰ったものであるかと思ったが、どうやら彼自身から明智宛てのものらしい。チョコレートを受け取り、もう一度箱を眺めてみた。
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