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    irsk0064

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    irsk0064

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    炎博♂。寝てる炎にちょっかいを出す博の小話。

    些細なイタズラ心ふわりと浮上する感覚を覚え、ドクターはパチリと目を開いた。

    見慣れた自室の天井が映ったことから、眠りについていたのだと理解する。
    部屋の明るさからすると今の時間帯は日の出前だろうか。
    時計を確認しようと、まだ稼働しきっていない身体でベッドから起き上がろうとした。
    すると、腕になにか重いものが引っかかる。
    ああそういえば、と横を見れば、珍しくまだ眠り続けているエンカクがいた。
    昨夜は久しぶりにゆったりとした睦事だった。
    そのためだろうか、普段と比べれば身体のきしみは大したことはなく、だるさもほとんど感じられない。

    エンカクを起こさないようにころりと寝返りをうち、まじまじと彼の顔を覗き込む。
    整った彼の顔は、どんな時でも美しく感じるものだなと関心する。
    普段は鋭い瞳も今は閉ざされ、穏やかな表情を浮かべている。
    更にきりりとした美しい眉も和らいでおり、心なしか幼い雰囲気を醸し出していた。

    そんな顔を見つめていると、むくむくとイタズラ心が湧いてくる。
    果たしてつついても起きないのだろうか、と。
    ちょっとした気配にすら、すぐに目を覚ます彼を寝かしておいてやろうと良心が囁くが、抑えきれずにつん、と頬を人差し指でつつく。
    「…、…。」
    むずりと眉が動いたが、瞼が開かれる気配はない。
    肌の弾力を楽しむように更につんつんとつつくが、それでも開かない。
    こうなったら目を覚ますまでやってやろう。
    たとえ怒られる可能性があろうとも。
    普段はやれないイタズラを目の前に、ドクターは止めるという選択肢を投げ捨てた。

    すっと指を滑らせ、固く閉じられた唇に触れる。
    昨日の夜は大分しつこく口づけをされたんだよな、と思い出しながらふにふにと触るが、エンカクは起きる気配がない。
    軽くつまんでも見るが、変化はなし。

    次は耳に触れた。
    サルカズ特有の尖った耳の縁をゆっくりと指でなぞる。
    左の耳には源石が少し張り出しているが、そこには触れないようにそっと避ける。
    人によっては源石を美しいと評価するものもいるが、個人的にはとても複雑な存在だ。
    これ以上彼の身体を侵食しないでくれたらいいのにと、祈るような気持ちのまま、そっと耳に口付ける。
    流石に息を吹きかけると起きてしまうだろうから、軽く触れるだけの口づけを何度も落とす。
    が、変化なし。
    つまんで軽く引っ張ってみるも、特に効果はなかった。

    最初は面白がっていたが、ここまで起きないとつまらなくなってくるのは勝手だろうか。
    ええい、と今度は鼻の頭にがぶりと甘噛みする。
    歯を強く立てないように、何度も角度を変えて噛んでみるも動く気配がない。

    実は起きているのでは?と再びのぞき込んでみるも、瞼は閉じたまま、呼吸もゆっくりと繰り返されているだけだった。

    「…なんだよ、私のことを無視でもしているのか」

    つんと唇を尖らせるも、返事はなかった。
    だんだん腹がたってきて、今度は本気で起こそうとぐいっと唇に口付けた。
    舌を入れようとぐいぐいと押し付けるも、エンカクが熟睡しているせいか、うまくいかない。
    こうなったらこじ開けるしかない、と思い指を差し込もうとした。

    とたんに、ばちりと橙の瞳が開き、目が合う。
    「んむっ!?」
    ねじ込もうとしていたドクターの舌は、大きく開かれたエンカクの口にあっけなく食われ、じゅるじゅると味わられてしまったのだった。


    …………


    「………君、いつから起きてたんだ」
    「…頬に触れたあたりだ」
    「最初からじゃないか!」
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