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    r103123

    @r103123

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    r103123

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    現代AU二人とも社会人
    同じオフィスビルで働く二人。よくすれ違うため互いに顔見知りだが別の会社のため話したことは無い。

    ナンパする藍忘機自動販売機の前にある休憩スペースのベンチで、スマートフォンを弄っていた魏無羨の手元に影が落ちる。なかなか戻らない魏無羨を同僚の誰かが呼び戻しに来たのだろう。欠伸を噛み殺しながら顔を上げる。
    「なに? あ、」
    見上げた先にいたのは見慣れた同僚ではなかった。先月辺りからここで見かけるようになった、恐ろしく整った顔立ちの男が立っている。
    「急にすまない。間違って買ってしまって、よければ貰ってくれないか?」
    高そうな腕時計が巻かれた手には無糖の缶珈琲と炭酸ジュースがあり、そして何故か魏無羨に炭酸を差し出している。
    「俺に? 貰っていい……んですか?」
    「うん」
    思わず口から出そうになったタメ口を何とか敬語に繋げて愛想笑いを浮かべる。それにしても綺麗な男だ。性別を超越した美しさは何故オフィス勤めを選んだのかと思わず問いたくなる域に達している。
    「ありがとうございます。あ、お金」
    「いい。受け取ってもらえると助かる」
    「じゃあ遠慮なく」
    馴染みのある炭酸を受け取り、プルタブに指を掛けた時、男は何故か魏無羨のすぐ隣に腰掛けた。
    「……?」
    幾つもあるベンチの中からわざわざ魏無羨の隣を選んだことに首を傾げながらも、手の中の缶珈琲を握ったままの男に話しかける。
    「よくすれ違いますよね。お兄さんのオフィスもこの階なんですか?」
    「うん」
    ……早速話が途切れてしまった。会話がしたくて隣に来たのかと思いきや、そうでも無いらしい。更に首を傾げながらも折角の美人と話す機会に一方的な会話を続けてみる。
    「俺、魏無羨って名前で、あの斜め前のオフィスで設計やってるんですよ。残業ばっかりで」
    「知っている」
    「え?」
    「君のことは知っている。ここでよく話をしているから」
    「あぁ。声がデカくてご迷惑を」
    「っ、違う」
    「違う?」
    話の行方が分からなくてお兄さんの方に顔を向ける。長い指に握られたままの開けもしない缶珈琲。ギュッと閉じられた唇。それに燃えるように赤くなった耳朶。
    そして元から知っていたらしい個人情報と、買い間違えようのない二種類の飲み物。
    「まさか、ナンパ……?」
    お兄さんは座ったまま器用によろめき、それから顔を伏せてそれはそれは恥ずかしそうに小さく頷いた。
    「君の、連絡先が知りたい。……嫌でなければ」

    「っ」
    ボンッと爆発するように魏無羨の首から上が熱を持つ。好意を持って声をかけられることも、連絡先を聞かれたことも初めてではなかった。そう、初めてでは無いのだ。なのに顔が燃えるように熱くて缶を握った指が震える。
    「嫌じゃない!」
    思ったより大声が出て、ぽかんと此方を見るお兄さんと目が合う。更に恥ずかしくなって炭酸を一気飲みし、缶を勢いよくベンチに置く。
    「交換しようぜ、連絡先」
    「うん」
    無表情ながらも嬉しそうにスマホを差し出してくるお兄さんの名前は藍忘機というらしい。顔の熱は引かないが段々と調子を取り戻してきた魏無羨は、自身の連絡先が表示されたスマホを見つめる藍忘機を横目で眺める。
    ナンパってことは、此奴、俺が好きなんだよな……?
    思わず上がりそうになる口角がむず痒いが、眉間に皺を寄せて平常心を装う。
    「なぁ。今度飯でも行く?」
    「メシ……」
    噛み締めるように繰り返す藍忘機は何とも初心そうで、この容姿でこの初心さは反則だろうと蹲りたいのを何とか堪える。

    ゆっくりと呼吸を整えたらしい藍忘機が、魏無羨の方に身体を向ける。
    「私は料理が趣味だ。だから私の家で君をもてなしたい」
    家。家ときたか。初回からお家デートを提案され一瞬にして色々なことを思い浮かべてしまった魏無羨は自分の顔から湯気が出たように錯覚する。なのに魏無羨を見つめる藍忘機の瞳は真っ直ぐで、お泊まりだとかそれに伴ういやらしい行為の意図を含んでいるとはとても思えなかった。
    浮かんだいやらしい妄想を掻き消して口を開く。
    「……ナンパの後いきなり家? 藍兄ちゃんってば意外と大胆なんだな」
    振り回され続けることに対するささやかな仕返しだ。羞恥を煽ってみると、素直に動揺し、藍忘機の手の中の缶珈琲が歪んだ。
    「っ! そ、そういう意味では!」
    「ハハハハハハハハハハ。分かってるよ」
    立ち上がって飲み終えた缶を捨て、大きく伸びをする。そろそろ戻らないとまた無駄な書類まで押し付けられてしまうだろう。
    「俺は、そういう意味でもいいよ。……連絡待ってるから」
    恥ずかしくて、振り向けない。赤くなった顔を意味もなく袖で拭いながら、魏無羨はオフィスへと戻った。

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