Autumn Gleam金木犀の甘い香りがふんわりと漂う夕暮れ時。スレッタは小さく息を吸い込むと、嬉しそうに目を細めた。
「ん~、いい匂いです」
隣を歩くエランが少し顔を傾ける。
「金木犀の香り?」
「はい。この匂いがすると、秋だなあって思います」
そう言ってスレッタは、どこか懐かしさを感じるように微笑んだ。エランも視線を前に戻しながら小さく頷く。
「そうだね」
「紅葉を見るのも好きですけど……金木犀の香りって、甘くて、どこか懐かしさを感じさせてくれる香りですよね」
彼女の言葉に耳を傾けながら、エランはゆるやかな風に乗る金木犀の香りを静かに感じていた瞬間。
『ぐぅうう』
その場を空気を壊すような音がなる。エランは音の発生源をじっと見つめると、発生源であるスレッタはエランの方を見ることもなく固まっていた。
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