Synchronicity目が覚めたとき、その衝動がすべてを支配していた。胸をかきむしりたくなるようなその衝動に居ても立っても居られず、弾かれるようにして部屋を出た。飛び出てみれば外はまだ薄暗い夜明け前。時計など確認もしていなかったが、たとえ部屋へ戻っても再び寝ることは難しいだろうし、かと言って他のことも手に付きそうにない。…このままでは良くない。そう思い至り、特に目的地を決めるわけでもなく思考を切り捨てふらふらと足だけを動かし始めた。早朝のランニングをするにもまだ早い時間。そんな、いつもより少しばかり時間が違うだけにも関わらず、見慣れた道を歩いているはずなのに、なんだか知らない道に迷い込んだような不思議な錯覚に陥る。そんな感覚にぼうっとしていたのは一瞬だけだと思ったが、頬を撫でる冷たい風に、いつの間にか浜辺まで来ていたことに気がついた。先程よりは薄明るくなった空、水平線から滲み出してくる光に目を細める。
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