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    かいと

    ほぼ鍾タル絵。現パロ、年齢操作、けも化、女体化etc…あなたの地雷に配慮はしません。
    気まぐれにぽいぽいしてます。

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    かいと

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    鍾タル ワンドロワンライ お題「嘘」用に書いてたけど2時間以上掛かっちゃいましたね…
    また、鍾タル未満になっちまった…何かウジウジしてる公子殿です。

     ファデュイの最年少執行官“公子”タルタリヤが璃月へと派遣されたのは、表向きはスネージナヤが各国に進出し経営している『北国銀行』の璃月支店の取締役を務める事。真の目的は彼が唯一忠誠を誓ったスネージナヤの神、女皇の命により璃月の神、岩王帝君の神の心を奪う為。
     あまり得意ではない暗躍なんて事をやって、最終的には璃月の地に、か弱い一般人だって巻き込む事をしでかしたのに、蓋を開けてみたら奪い取るまでも無く岩王帝君は女皇直接契約を交わしていて、自ら神の心を手渡したのだった。それも別に派遣されてきた“淑女”の手に渡した。
     全て神の掌の上で踊らされていた。
     よりによって岩王帝君は、璃月に来てからビジネス上でも個人的にも懇意にしていた往生堂の客卿、鍾離の真の姿だった。
     結構な頻度で一緒に食事をしたり、話をしたりしたのに何も言ってはくれなかった。当然と言えば当然な気もするのだが、自分は目くらましに使われていただけだし、淑女に出し抜かれたし。という不満も重なり「なにも言ってくれないの」なんて不貞腐れた言葉が口を付いた。
     タルタリヤのやらかした事を全て知っていて、璃月の地を守った立役者でもある旅人とその小さな相方を誘ってお詫びの会食の場でそんな不満を零した際に、鍾離が旅人に対して自分との関係は資金援助を受けるだけの関係だと言ったらしい事も知って、ガツンと頭を殴られたような気がした。

     始まりこそ、北国銀行の出資先である往生堂の客卿がこの国一番の知識人だと誰もが口にする人物だから岩王帝君や璃月の情報を聞き出すのが一番の目的で近付いたけれど、そういう事を抜きにしたって頻繁に食事してたと思う。
     本当に色々知っていて、璃月の事を人に教えるのが好きな人だから他所の国から来たタルタリアは当然璃月について知らない事で、それこそシチュエーション別の絶景が見えるポイントだとか、タイプ別の美味しい璃月料理が食べれるお店だとか、演劇等芸術関係に至るまで、任務とは全く関係の無い蘊蓄だってずっと聞いてるぐらい(時々さえぎったりしてしまうことはあったけれど)鍾離と過ごす時間を“楽しい”と感じていた。だから、

    「鍾離先生、俺と“お友達”になってくれない?」

     なんてらしくない事を口にしてしまった事もあった。
     璃月に居るのは任務の為だし、例え岩王帝君の神の心を奪うなんて任務を与えられていなかったとしてもタルタリヤが一つの所に長く留まる事なんてない。そう遠くない内にまた別の国での任務を与えられるだろう。ビジネスライクな関わりで十分だったのにどうしてかそんな事を言ってしまった。鍾離だってそれに対して

    「そうだな。俺も知見を交わす知人は居ても、今“友人”と呼べる存在は居ないからな」

     と、楽しそうに笑って友達になる事を了承してくれたのに、

    「(あれ、嘘だったんだなぁ…)」

     一応出資元の要人からの言葉だから嫌々でも是と言っただけなのか、それともタルタリヤの目的を知っていたから「友達になってほしい」と言った事を嘘と捉えて適当に言葉を返しただけなのか…

    「(ファデュイだから、他国の人には信用されないの慣れてる筈なのになぁ)」

     他国での任務ばかり与えられるのも他国の人間どころか同じファデュイ内でも警戒されてる結果なのだから、誰かに警戒される事に今ままで何かを感じた事が無かったのに。
     無数の針で刺されているような痛みを感じる胸の上でそれを抑えるようにぎゅっと掌を握りしめた。

    ***

     元々事務仕事は後回しにしがちだったのと、自分のやらかした事の後始末に関する書類等が執務室で山積みになっていたので、1ヶ月は執務室にこもり切りだった。
     今となっては昼時に北国銀行を抜け出して誰かさんと食事したり、その約束を取り付けたりなんてする必要が無くなってしまったから。きっと向こうも清々してるんだろう。タルタリヤの方から誘わなければあんなに頻繁にしてた会食もパッタリ無くなってしまったのだから。──なんて、ちょうど書類の山が片付いてしまったせいで詮無いことを考えモヤモヤしてしまう。
     はぁぁぁぁ…と淀んだ気持ちを吐き出す様に長い溜め息を吐いたタルタリヤは気を取り直すように頬をパンパンと叩いて立ち上がる。

    「久し振りに外食でもしようかな」

     ここ暫くは自分で簡単なものを作ったり、部下にティクアウトしてきてもらったもので食事を済ませていたから、久々に出来たての璃月料理が食べたくなってしまった。
     夫々の店先で掲げられている燈籠のお陰で夜でもそこそこ明るい道を歩きながら、タルタリヤの足は万民堂へと向かう。伝統的でそこそこ値の張る料亭なんかで食べるのも良いけど今は庶民的なものを食べたい気分だった。運が良く菱香の居る日だったら奇抜な新作料理も食べれるかもしれない。
     万民堂に近付くとわいわいと賑やかな声が聞こえてきて、その中に菱香の声が混じっているのも聞こえる。ひょっこり入口から中を覗き込んでみると、丁度料理を運び終わった彼女がタルタリヤの事に気付いて軽い足取りで近付いてきた。

    「いらっしゃい公子さん!今ちょっと混んでて…──」

     別にこの後は何も用事が無いから席が空くまで待っても問題ない。と言おうとして、何気なく店内を見回し時に隅にある一卓で相変わらず見かけの割りに良く食べるよね。って量の料理を卓に並べている男の石珀色の目と一瞬目が合った気がして慌てて目線を映す。
    「あ、そうだ鍾離さんが居るから相席で──…」
    「残念!仕方ないからまた今度にするよ」


     菱香の言葉を遮って、逃げるように「またね!」と言い残して立ち去るタルタリヤに菱香は不思議そうに首を傾げながら「また来てねー」と見送ってくれた。
     一ヶ月前のタルタリヤなら菱香の提案どおり先に店に居た鍾離に相席をお願いしてただろう。今は色んな意味でどの面下げてあの男の前に出れば良いんだ。足早に進みながら万民堂が駄目なら三杯宵に行くか、それとも今日もテイクアウトで済ませるか、何ならもう今晩は何も食べずにさっさと寝てしまおうかなんて頭の中で色々考えていたから声を掛けられていた事に気付かなかった。気付けてたなら即座に走って自分の部屋まで逃げていただろう。後ろから腕を掴まれて、執行官ともあろうものが突然の事に反応できずそのまま後ろによろけてしまい、腕を掴んできた人物に背中を預けてしまう。

    「公子殿っ」
    「鍾離、先生…」

     気配を察する事が出来なかった自分にも、いきなり腕を掴んできて、それどころかまるで逃げないように掴んでいる方とは逆の肩も掴んでいる鍾離にもイライラして、視線は鍾離を視界に入れないように前に向けたまま「何か用?」と素っ気なく言い捨てた。

    「…っ、いつも通り、相席すれば良いだろう」

     鍾離はタルタリヤの冷たい声に一瞬驚いたように目を丸くする。
     それとは逆にタルタリヤを何処かあどけなく見せる要因でもあるだろうパッチリとした目をすぅと細めながら「はっ」と嘲笑を零す

    ──いつもどおり、ねぇ…

    「そんな事を言いに食事の途中なのに態々俺“なんか”を追いかけてきたの?あぁ、また財布忘れた?俺の財布あげるよ。これは返さなくていい──」
    「公子殿、違う、そういうことでは…」
    「じゃぁ何。」
    「だから共に…」
    「…もう、俺“なんか”と一緒に食事しなくて良いんじゃない?ファデュイとは必要以上に関わりたくないでしょ」
    「“友人”と共に食事をする事は普通の事だろう。それに、何故先程から“なんか”と自分を貶すような言い方している」

     ──友人?友人だって?どの口が。

     一瞬苛立ちが一番上に達して頭が沸騰したようにも感じたが、同時に寂しくもなってきた。

    「友人なんて、嘘吐かなくて良いよ。相棒達に言ったんでしょ。俺との関係は資金援助の為だけの関係だ。って
     資金援助してる側の偉い人な俺が「友達になって」って言ったから断れなかった?別に資金援助は仕事で正式に契約を交した話なんだから、俺個人のお願いを断ったところで無しにしたりしないよ。悪者のファデュイだけど、そんなことしない」

     だから、手離してくんない?
    そう言った声が事の他寂しそうで自分の事ながらながら笑ってしまいそうになる。そんなタルタリヤの腕掴む鍾離の手が一層力強くなる。

    「違う。違うぞ公子殿。
     確かに旅人達に似たような話はした。それはあくまで往生堂とファデュイの関係であって、俺個人と公子殿個人は友人で間違い無い。
     俺もお前と友人になりたいと言ったのは本心だ。嘘じゃない」

     だから、そんなに寂しそうな顔をしないでくれ。

     なんて言って力づくでタルタリヤを自分の方に振り向かせた鍾離は、腕を掴んでいた手を漸く離してやって、まるで幼子をあやす様にその大きな手のひらでタルタリヤの北国特有の白い頬を撫でる。

    「別に寂しそうな顔なんてしてないし」
    「そうか」
    「笑うなよ。って言うか、俺つい最近先生に騙されたばっかりでちょっと怒ってるけど、でも俺も先生の大事な璃月を…」

     ─海に沈めようとした。
     そう言いかけたところでタルタリヤの口を塞ぐようになか鍾離の指先が唇を押さえる。じぃっとタルタリヤが見つめると鍾離は穏やかに微笑う。

    「…だから仲直りの為、久し振りに一緒に食事をしないか?菱香の新作もある」
    「…そうだね。俺も久し振りに万民堂のご飯食べたい。」

     タルタリヤも微笑って答えると。二人でユックリと来た道を戻る。笑顔で「いらっしゃい」と再び出迎えてくれた菱香に新作とお酒を注文した。
     ここ暫くタルタリヤの思考をモヤモヤさせていた胸のつかえも綺麗に無くなって、暫くぶりに本心から笑って、美味いお酒と料理に舌鼓を打ちながらこれまた久方振り鍾離の蘊蓄を聞いた。

     因みに、案の定鍾離は財布を忘れていたのでタルタリヤは溜め息を吐きながら、でも何処か楽しそうに「俺が払うよ」と言った。

    ■終わり■
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