月になって、月を見ないで中庭で月見をしていた時のことだった。
「なぁ心平、月が綺麗ですねって知ってるか?」
「あぁ・・・確か夏目先生が言ってたやつだよね。確か意味は・・・」
「あなたを愛していますだってよ」
ダンくんは水面に映っている月をじっと見ながらおいらに突然こんなことを聞いてきたのだ。急にどうしたの?と聞くとダンくんはにかっと笑った。
「なんとなく、気になったんだよ。お前だったらなんていうのかって」
「おいらだったら?ええ、悩んじゃうなぁ」
「はは、気楽に答えてくれよ」
「気楽にかぁ・・・だったらそうだなぁ」
少しの間考えてようやく思いついた、いつかダンくんに贈りたい言葉。おいらの気持ちをわかってくれるかわからないけど、わかってくれると嬉しいな。
「月になってかな」
「月になってかな」
少し照れくさそうに笑う心平を見て心の中の何処かが痛み出した。彼の顔はまるで恋を覚えたばかりの少女のようだ。もし、それを誰かに伝えるんだとしたら俺は、俺は・・・・・・。
「月になってか、結構縋るようにいうじゃないか」
「えへへ、そういうダンくんはなんていうの?」
「俺か?俺だったら・・・」
俺は心平にこの気持ちを告げるつもりは毛頭ない。でも、少しでも俺の気持ちに気づいてくれるなら・・・。
「俺だったら月を見ないでかな」
前提として二人は両片想いです。一つ違うのは心平くんはいつか付き合いたいと思っていますが、檀くんは付き合うことを諦めています。(理由はお任せします。)
月になっては好きになって、月を見ないでは他の人を見ないでという意味です。わかりにくかったらすみません。