夜明け 夜明け
Tonfer
「みて! レト! この黒曜虫!」
「あぁ、知ってる。食えるやつ」
「うん、うん! って、違う違う! 確かにそうだけどさぁ! それだけじゃないんだよ!」
太陽が沈み、天で星々が瞬きだした頃。焚いた炎の揺らめきに照らされながら、アルは自身の大きい手からもあふれる程に大きく、黒々とした黒曜虫と呼んだ甲虫を、レトと呼ばれた青年の眼前にぐいと押し付けるかのように見せびらかした。レトが冷めた表情で淡々と答えた通り、その黒曜虫は森で取れる豊かな食料の一つだった。
しかし、レトの答えに乗りつつも否定したように、アルが教えたかったのはそこではない。
「見てほしいのはこの子の羽の模様! 普段はむしって食べないこの羽! ほら、光が当たるとキラキラしてるでしょ!」
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