【翠嶄さん生誕記念 SS】◇◇◇
「私の…誕生日?」
珍しく口を開いたかと思えば、この黒い竜にしてはくだらないことを聞く。誕生日を聞かれたらやることは恐らく一つ。ヒトは何かと誕生した日を祝いたがる生態は、遠の昔に観測していたから知ってはいるが…私には理解し難い。
「何故そんなことを?聞くだけ無駄でしょう。」
『………、日頃の感謝も兼ねて 皆に聞いていることだ。覚えている範囲で構わない。』
「私はここの規則と衣食住の分だけ動いてるだけですから、気を遣わなくて結構です。それに私は自身の誕生日に大して関心もありませんから、覚えてなどいませんよ。」
『…そうか……時間を取らせた。すまない。』
そう言うと 踵を返し足早に去って行った。
やや残念がっていたようにも見えたが 何故そこまで知りたいと思うのか。
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