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    henkotu_kasi

    @henkotu_kasi

    表には出せないけど、別垢に投げるのもなんかな…という、自己満足の落書きをここに投げる予定。表の小説と比べると自我が強い。

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    henkotu_kasi

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    春の暖かさもなくなる雨の日の夜は、どうしても熱を求めてしまうものだ。

    Raining. 薄暗い部屋の中。ぬくぬくと暖かい布団の中に対し、部屋の中は窓から溢れる冷気によってすっかり冷え込んでいた。唯一部屋の空気に触れている顔だけが、その気温低下を感じ取れる。
     窓の方を見てみれば、そこには黒く分厚い雲が空を覆っている。心臓や呼吸の音を全てかき消すほどの大雨が窓に叩きつけられ、春の陽気はどこかに消えてしまったようであった。時折、雲の中を走る雷が室内を照らし、少し遅れて轟音が鳴り響く。今、目の前にあるのは冷え冷えとした夜であった。
    「…雨か」
     目覚めたばかりで未だに覚めない頭が、そんなことを思う。雨が降ろうが雪が降ろうが、数分廊下を歩くだけで執務室に到着するため、仕事にはなんの関係もないのだが、こうも天気が悪いと気分も上がらない。おまけに気持ちの良い布団が「もう少し」と身体を引っ張って離してくれないのだから、二度寝という選択肢を手に取ろうとしてしまう。
     ただ、キィ、と開いた扉の奥から差し掛かる光と影が、その手を止めた。
    「…あれ、先生…?起きてらっしゃったんですか?」
    「まあ、たった数分前だけど、うん」
     扉の奥から現れたのは、ベージュ色の長い髪の毛を揺らす生徒。こちらを驚かさないようにと配慮し、ゆっくりと扉を開いたらしい。起きていることに気づいた彼女は、起こしたのかと心配したらしく、そんなことを小さな声で言う。大丈夫だよ、なんて言うと、彼女は部屋の中に入って、私が寝ているベッドに座った。
    「昨日はお疲れでしたので、運ばせていただいたのですが…寒くありませんでした?」
    「全然。むしろ、抜けたくなくなるぐらいには暖かいよ」
     彼女の言葉を聞いて、昨日の出来事を思い出す。確か、仕事中に眠気でうとうとしてしまい、それに気づいた彼女にソファーで休むように言われたのだったか。どさ、と腰を落とした後のことは、あんまり覚えていない。
    「…ノノミさんも入る?今日は少し冷えてるから、さ」
    「でも、私も入ったら出られなくなっちゃいますよ」
    「困ったな…それじゃあ一緒に寝られないのか」
    「もう。先生、こっそり二度寝しようとしてませんか?」
    「バレたか」
     そんな彼女も、悪魔の誘いに乗るように布団の中へとやってくる。何事も言わずそのまま抱き合えば、少し温度が上がったような気がした。よりぽかぽかと温かくなって、ここだけ春の陽気が戻ってきたように感じられる。はぁぁ、と零れたため息は、その幸せが口から漏れたように思える。
    「…出たくなくなっちゃいました」
    「だろうね。このまま布団に入ったまま行けないかな」
    「…試してみます?」
    「そうして二人まるごと包んで、結局躓いたんじゃなかったっけ、前回は」
     ぎゅぅぅ、とより強くなった力が、彼女の怒りを表していることに気づいて、私が宥めるように彼女の頭を撫でる。彼女から許しを得て、私も抱き返した。幸せを逃がさないように、彼女もまた強く抱き返す。ぎゅぅぅぅ、と密着していると、いつしか仕事へのやる気は欠片もなくなっていた。
    「二度寝しちゃおっか」
    「ダメですよ」
    「でも、ノノミさんも眠たそうだよ」
    「…先生のせいですよ」
     気づけば彼女の目蓋もゆっくりと落ちていて、流石の彼女でもこのまま眠気に耐えるのは難しそうであった。となればこの布団から脱出するしかないのだが、如何せんやる気が沸かない。
    「…こうしましょう。いっせーの、せ、で布団から出て、そのまま一緒に執務室に向かえば良いんです」
    「寒くないかな」
    「ずっとぎゅーっとしていれば、大丈夫です」
     なるほどな、と私は納得する。意識がふわふわとし始めた彼女をぎゅっ、と抱き締めて、深呼吸をする。ふわぁっとした優しいシャンプーの匂いが、鼻腔をくすぐった。
    「それじゃあ行くよ…いっせーの、せっ!」
    「やぁっ」
     ばっ、と布団から飛び出すように、ベッドから起き上がった。そのままベッドを降りると、遅れてやってきた冷気が身体の熱を奪ってくる。
    「早く行こう」
    「は、はいっ…あっ、ひゃっ!?」
    「うぁっ!?」
     抱き締めあいながら歩くというのは難しいもので、ガッと引っ掛かった脚がバランスを崩し、そのままベッドへと倒れてしまった。ばさぁ、と埃が舞い、けほっと咳が出る。出ることができなかったのにもかかわらず、彼女は楽しそうだった。
    「失敗しちゃいましたね」
    「ダメだったかぁ」
    「…このまま、二度寝しちゃいましょうか」
    「ダメだよ」
     ふふ、と笑みが零れる。ようやく離れた身体との間に、空気が滑り込むようにして身体を冷やす。私たちはそのままずっと抱き合いたい気持ちを抑えて、けれども手を離すことはできなくて、肩を並べて執務室に向かうのだった。
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