Raining. 薄暗い部屋の中。ぬくぬくと暖かい布団の中に対し、部屋の中は窓から溢れる冷気によってすっかり冷え込んでいた。唯一部屋の空気に触れている顔だけが、その気温低下を感じ取れる。
窓の方を見てみれば、そこには黒く分厚い雲が空を覆っている。心臓や呼吸の音を全てかき消すほどの大雨が窓に叩きつけられ、春の陽気はどこかに消えてしまったようであった。時折、雲の中を走る雷が室内を照らし、少し遅れて轟音が鳴り響く。今、目の前にあるのは冷え冷えとした夜であった。
「…雨か」
目覚めたばかりで未だに覚めない頭が、そんなことを思う。雨が降ろうが雪が降ろうが、数分廊下を歩くだけで執務室に到着するため、仕事にはなんの関係もないのだが、こうも天気が悪いと気分も上がらない。おまけに気持ちの良い布団が「もう少し」と身体を引っ張って離してくれないのだから、二度寝という選択肢を手に取ろうとしてしまう。
1928