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    ehhen_147

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    ehhen_147

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    1/7インテにて発行予定のオメガバース三リョ本の超超冒頭サンプルです。
    書けてるところだけ…進捗約20%です…。
    三井がモブと話してるだけですがちゃんと三リョになります。

    ↓部数アンケです、ご協力いただけたら嬉しいです。
    https://x.gd/Q34wv

    1/7インテ新刊(サンプル)注意事項。
    ・他人パロ、バスケしません
    ・Ωのフェロモンを感じないサラリーマンαの三井
    ・番を探してるΩ宮城
    ・二人とも過去にモブと付き合っていた描写があります(サンプル部分には三のみ)

    以下、サンプルです。

    --------------------------------------------------

     今月ピンチだわ、と誰に言うでもなくボヤいた三井に、すかさず「割りの良い仕事がある」と口を挟んだのは同じ営業部の林だった。
     パソコン越しにウインクを寄越してくるようなお調子者からの紹介に全く抵抗がなかったわけではないが、背に腹は変えられなかった。三井の金欠は割と深刻なのだ。
    「割の良いって、一体どんな仕事だ?」
    「……ここではちょっと」
     きょろきょろと辺りを見回す林に、ああ、と一人納得する。確かに社内で堂々とする話ではない。
     軽率だったなと反省しながらいそいそと取引先からのメールをチェックしていると、ディスプレイの左下に社内チャットの新着通知がぽこんと顔を出した。
     個人的にチャットでやり取りをする間柄の同僚で、子犬をアイコンにしているのはひとりしかいない。
     ふいと林の方へ視線をやると、またしてもぱちんとウインクを投げかけられる。そして、チャットを見ろと雑なジェスチャーまで送ってきた。
     先ほどの会話の続きを濁すような物言いは仕事中だぞと三井を咎めたのではなく、誰が聞いているか分からないところで副業の話を続けるのはちょっと……という軽いものだったのだろう。
     一通り急ぎの案件がないことを確認してから、三井はチャットの新着通知をクリックする。そこにはとある居酒屋のリンクが貼られていた。
     見覚えのあるその店名は、つい先日も林と訪れた大衆居酒屋だった。その時は林が彼女に振られたとかでやけ酒をして大変だったのを思い出す。
     三井は送られてきたURLをクリックする前に、テキストボックスへ林への返信を入力する。
    『割の良い仕事って、飲み屋の店員? ここ、そんなに時給いいか?』
    『バカ、居酒屋の時給なんか目じゃねえって。三井、今日暇? 飲みながら話そうぜ』
    『飲みたいだけだろ、それ』
    『飲みたいってのは否定しないけど、まじでこれ三井案件なんだって! 絶対向いてるよ、お前』
     ……俺案件ってなんだ?
     そう頭を悩ませたところでピリリと社用携帯が鳴った。
    「お世話になります、○○の三井です。はい、ええもちろん……では来週の……はい、私は問題ないです、はい」
     社内カレンダーを確認し、先方が希望する日にちに予定を入力する。そして、今日の十七時に入っていた予定から相手先の会社名を削除した。商談のリスケジュールについての電話だった。
     向かいの席から静かに耳を傾けていたのだろう、林から更にチャットが届く。
    『暇になったな。十九時開始くらいでどう?』
     目の前で予定を把握されては仕方がない。まあ元より断る理由もないので、三井は林からのメッセージにオッケーマークをつけた。
     怪しい仕事であればその場で断ればいい。話を聞くだけなら問題ないだろう。
     三井はパソコンの画面を落とし、揚々と会社を出た。最後の予定こそ無くなったが、今日は一日外回りの予定だった。



     話を聞くだけだと何度も自分に言い聞かせながら、指定された居酒屋ののれんをくぐったまでは良かったが、なんと林本人も仕事内容には詳しくなかった。
     というのも、仔細は面接に合格し、なおかつこれに関わる全てにおいて一切の口外を禁じるとの誓約書に捺印した者のみに明かされるのだという。
    「うっっっさんくせえー……。んなヤバそうなの紹介してくんじゃねえよ」
    「でもさあ、三井ってαだろ? それも、Ωのフェロモンに……その、魅力を感じにくいっつう」
    「今さら気使わなくていいって。鈍感通り越して不能なんだって、俺」
     お通しで出てきた浅漬けをパリ、とかじりながら、三井はなんでもないふうに話を合わせる。現に、三井にとってこの手の話は本当にどうだって良かった。
     何年も前の話だが、三井は当時付き合っていたΩの彼女から、自身の変わった体質について変に勘ぐられたことで面倒事に発展した経験があった。
     面倒事といっても、彼女の――Ωのフェロモンに全く反応しないってどういうこと! といった、まあ良くある恋人同士の単純なすれ違いに過ぎなかったのだが、その時、三井と元彼女にはそれが一大事だった。
     別に隠すことでもなかったのに、お互いに意地を張り合って結局一か月ももたなかった。若気の至りとはまさにこのことだ。
     それ以降、同じ轍は踏むまいと、三井は割と誰にでも自分の体質について明け透けに話すようになった。
     三井はともにα性の両親から生まれた生粋のαだったが、その両親の意向により一般的なαの家庭と比べると質素で地味な生活を送っていた。
     中学、高校はいずれも近所の共学校に通い、大学も自分の学びたいことを優先して選んだ。
     その後もアルバイト先、就職先など全て三井の意思で選択してきたものだから、自らがαという希少種であることの自覚が薄い。
     それでも就活に困らない程度には勉強が出来たし、運動をさせればエース級の働きをしてしまうことからして、三井はやっぱりαで間違いないのだろう。
     コミュニケーション能力も申し分なく、それは大手商社の営業マンとなった今にも十分に活きている。
     何の気なしに周りを見渡せば、大なり小なりバース性によって人生を決定づけられている者たちが多い中、三井は幸せだった。
     ……たった一つの欠陥――Ωのフェロモンを感知出来ないことを除けば。
    「俺はダメだったけどさ、三井は大丈夫だと思うんだよ」
    「お前、もう面接受けてたのか」
    「そ。面接のすぐあとに隣の部屋に通されるんだけどさ、そこがまじでやべーのなんのって」
    「……やばい?」
    「Ωのフェロモンが充満した部屋だった。まじで事故るかと思ったっつの。あれに何の意図があるのか分かんねえけど、多分耐性かなにかを見てるんだと思う」
     林は一枚の紙を三井に手渡しながら続ける。
    「仕事内容は普通にウエイターっぽいんだけどさ、ここ。時給がやべえだろ? 何をしたらただのアルバイトでこんなに貰えるんだって話」
     話を聞けば聞くほど怪しさしかなかったが、林がトントンと人差し指で示す「時給八千円」という破格の条件にぐっと気持ちが揺らぐ。
     それに、誰彼構わず騙してやろうという魂胆であれば林が面接で落とされる意味が分からない。恐らく、本当に適性を見て採用しているに違いなかった。
     ……そう思いたいだけかもしれないが。
    「募集人数たった一人だぞ。少しでも興味があるなら早めに連絡した方がいいんじゃね?」
    「だからってなあ……」
     林に手渡されたチラシに何度も目を通す。どこからどう見ても怪しいのに、どうしようもなく惹かれてしまうのはなぜだろう。
    「今電話してみろよ。その内海ってひとが担当だから」
    「今?」
    「そ、善は急げって言うだろ?」
    「これ、善か?」
     そこそこ酒が入って上機嫌な林は、机に置いてあった三井の携帯をぱっと取り上げたかと思えば、そのまま内海の電話番号を打ち込んでいく。ご丁寧に、番号の先頭には184が入力されていた。
    「ほら、後はお前次第だぞ」
     通話ボタンを押すだけというところまでお膳立てされて、三井のなけなしの警戒心はどんどん絆されていく。
     まあ、電話くらいいいか。非通知だし。
     三井はぐいっとハイボールを煽り、ええいと通話ボタンを押した。三回コール音が鳴り、その後に「はい」と相手が電話に出る。
     緊張していたのは初めの一言二言だけで、不思議なくらいに話が弾む。内海が恐ろしく聞き上手なせいだ。
     電話はものの五分ほどで終わり、気が付けば手元のメモに三日後の二十時という日付と、バーの名前が書きつけられていた。
    「決まったな、面接。ひよんなよ」
    「誰がひよるか」
     林はニッと笑って、三井がバイトに受かったら何奢って貰うかなー、とチューハイを舐めている。
     この時ばかりは三井もどことなく気持ちが昂っていて、何が良いか今から決めとけよ、なんて軽口を叩く。
     何故だか知らないが、三井は面接に落ちる気がしなかった。
     昔からそうなのだ。
     こういう試験ものに三井は滅法強い。これも、α特有のカリスマ性がなせるわざなのだろうか、はたまた三井の人好きのする性格に起因するのだろうか。
     三井は林の新しく出来た彼女の惚気話を話半分に聞き流しながら、程よい塩加減の枝豆を口に含んで咀嚼する。
     志望動機……どうすっかな。
     三井の頭の中は三日後の面接のことでいっぱいだった。ああでもない、こうでもないと何通りものシチュエーションを想像しているうちに、だんだんと気分がのってきた。
     頭の中で採用されたときのイメージが出来上がったところで、ちょうど林の話も佳境に入っていた。終盤の僅かな情報だけで林の彼女像を想像する。
    「お前にははもったい子だな」
    「そうなんだよ! また会ってくれよな。お前だと安心だし」
     何が安心なんだとは突っ込まなかった。林に悪気はない。



     結果から言うと、三井の思惑通り面接は全く問題なかった。
     別段穿った質問もなく、面接は終始和やかな雰囲気の雑談といったふうで、これなら普段の営業周りのほうがよっぽど頭を使うほどだった。
     林から聞いた通り、面接後にはすぐ隣の小さな別室に通された。
     壁沿いに置かれたソファへ座るよう指示されて、そのまま数分の間ただぼうっとしていると、突然扉が開いて男が一人部屋の中へと入ってきた。
     反射的にソファから立ち上がると、男は笑いながら言った。
    「そう構えなくて大丈夫です。えっと、三井……さん?」
    「はい、三井寿と申します」
     その男の声には聞き覚えがあった。恐らくこの男が内海だろう。
     内海に軽く会釈をしたところで、ソファへ座るよう促される。三井はもう一度だけ軽く頭を下げ、再び腰をおろした。内海は三井がソファへ座り直したことを確認してから、少しスペースを空けて隣に腰かけてくる。
    「三井さん、この部屋にいて何か感じましたか」
    「何か……とは?」
     林の言うことを鵜呑みにすると、この部屋はΩのフェロモンが満たされた空間なのだという。それでも、三井には何の変哲もないただの部屋にしか感じない。
     三井はつくづくΩのフェロモンに鈍感な自分の体質に呆れた。
     今回だけではない。初めてαだと診断されてからというもの、三井は幾度となく自らのバース性に疑問を持ち、個人的に専門機関での検査を繰り返してきた。もしかしたら、少しデキるβなのではないかと疑っていたのだ。
     しかしながら、そんな淡い期待もことごとく打ち砕かれ、三井の手元には何枚もの「α」と書かれた診断書が溜まっていく。Ωのフェロモンを感じ得ないことを除けば、三井は紛れもなく完全にαだった。
    「すみません。何も感じませんでした」
     三井は内海に正直にそう伝えた。
     すると内海はぱっと表情を和らげて、三井の前に右手を差し出してきた。
     おそるおそるその手を取ってみると、ぶんぶんと縦に振られてぎょっとする。
    「ぜひ貴方を採用させてください」
    「は……い?」
    「三井さんさえ良ければ、これからすぐにでも職場をご案内出来ますよ」
     勤務先はこの建物の中にあるんです、と三井そっちのけで話を進める内海に面食らいながらも、言われるがままに後をついていく。
     コンクリート打ちっぱなしの薄暗い通路を抜けて階段を降りると、その最奥には重厚な扉が備え付けられていた。
     扉の向こうはクラブか何かだろうか。かすかにだが軽快な音楽が耳へ届く。
    「ちょっとうるさいかもしれないですが、大丈夫ですか? 開けますよ」
     内海がノブを少し引いた途端、その隙間からは予想以上の爆音が漏れ出てきた。この音量をあそこまで抑えていたなんて……一クラブの防音扉にしてはかなり優秀ではないだろうか。
     二人はクラブ内を壁沿いに歩き、入り口とちょうど対角に設けられていたカウンター席へと並んで座った。内海が何か飲むかと聞いてきたので、三井は遠慮がちにウーロン茶をオーダーする。
    「まさか飲まないんですか?」
    「あ、じゃあ内海さんと同じもので……」
     ほどなくして二つのグラスがカウンターへ並べられた。内海はそのうちの一つを三井に差し出すと、乾杯とグラスを掲げた。透明な液体の中にはオリーブが沈んでいる。
    「三井さんには、ここで定期的に行われているイベントのスタッフとして働いてもらおうと思っています」
    「お酒、詳しくないんですが大丈夫でしょうか」
    「大丈夫ですよ。他にもバーテンダーやウエイターがいますから」
     給仕ではないイベントスタッフの仕事とは一体何なのだろう。三井が口を開きかけたところで、弾けるような声に先を越される。
    「こんばんは! ねえ、あなたフリー? 今夜私とどう?」
    「奈美さん、残念ですがこの方は参加者じゃなくて従業員なんです」
    「えー、そうなの? ほんと残念……超優良物件じゃん、て思ったのに」
     オフショルダーのニットワンピース一枚をさらりと着こなした奈美と呼ばれた女性は、内海が釘を刺した途端に口をつんと尖らせておどけてみせた。
     残念と言いながらも、奈美は未だにじっと熱い視線を三井に向けている。思わず苦笑すると、可愛い、と顎の傷を撫でられる。
    「これどうしたの?」
    「ああ、これはちょっと昔に」
    「痛い?」
    「そうでもねえ……っすよ」
     つい地が出そうになって慌ててとってつけたような敬語に戻すのを、内海は咎めるでもなく笑って見ている。
    「従業員ならちゃんと制服着せてよね。紛らわしいから」
     じゃあねと言って、奈美は元いた丸いハイテーブルへと戻って行く。
     そこには奈美のほかにも女の子が二人いて、奈美が何やら話をしたかと思えばすぐにきゃあきゃあと盛り上がっていた。その様子を何の気なしに見ていると、目端に空のグラスがトンと置かれる。
    「そろそろ事務所に戻りましょうか」
     有無を言わさないそれに、三井はまだ一口しか飲んでいないカクテルグラスを内海と同じくバーカウンターへ置いて元来た道を戻る。初めに面接を受けた部屋が事務所らしかった。
     内海の様子がおかしかったのは事務所に戻る道すがらだけで、契約内容や仕事内容の説明時にはすっかり元の穏やかな男に戻っていた。……会って数時間の三井には、どちらが本当の内海なのかは知る由もないのだが、まあそれは置いておくとする。
    「三井さんは婚活パーティーに参加したことはありますか?」
    「ありません」
    「ではあまり想像がつかないかもしれないですが、うちで開催しているイベントはまさしく婚活パーティーのようなものなんです。ただ、参加条件が「番が欲しいαとΩ」に限られている点が一般的な婚活パーティーと異なる点なんですけど」
     そこでふと、なぜΩのフェロモンに耐性があるかどうかのテストが行われたのかに納得がいった。おそらく、イベント中の従業員による事故を防ぐためなのだろう。
     それなら確かに三井はうってつけだった。Ωのフェロモンに耐性があるどころではない。全く感知しないのだから。
     内海の話を簡単にまとめると、三井はイベント中に事件や事故が起こらないための監視員のような役割を求められているらしかった。
     参会者同士が合意のもとパートナーになるのは何ら問題はないが、少しでも無理矢理な雰囲気を感じたらそっと仲裁に入るとか、違法な薬物が使われていないかどうかにも目を配る必要がある。
     意外と骨が折れそうだった。
    「言い忘れてたんですけど」
     三井が誓約書にサインをしていると、内海が思い出したように口を開く。
    「三井さんは大丈夫だと思うんですが念のため……。参加者とは絶対に番にならないようにお願いしますね。参加者の皆さんはお金を払ってイベントに参加していらっしゃるので」
     ……ああなるほど。そういうことか。
     先ほど、内海は三井が奈美に興味を持ったと思ったのだろう。それで、あの態度だったのか。
    「私はαですが、なぜかΩのフェロモンを感じない体質なのでその点は大丈夫だと思います」
    「そうですか。安心しました」
     内海が心底ほっとした顔をしているのを横目に、全ての書類に捺印し終えたところでその日は終わった。
     本格的に出勤するのは来週の金曜日からのようだった。


    本編へ続く…
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