理想「……ジェイコブ。ジェイコブ、聞いているか?」
「ああ、すみませんマスター。少し考え事を」
「『超凡入聖』の儀式により多くの『意志の力』を一つにした。だがリリスはもう持たないだろう。そうなる前に、原始胎海を掌握する」
ナルツィッセンクロイツは手に持って眺めていた報告書の束から目を離し、ジェイコブを見上げた。
「先程から浮かない顔だ、気がかりなことでも?」
「いえ、ただ……狩人たちがどう動くだろうかと」
回りきらない頭でなんとか言葉を返す。ギヨタンを筆頭としたファントムハンターの動向を危険視しているのは嘘ではないし、少なくとも、不自然な静けさは避けられたはずだ。
「吸収したエージェントから得た記憶からも、彼らが我々への警戒を強めていることはわかっている。彼らをひきつけるためにエリナス地下に戦力を集める。ジェイコブ、行ってくれるね?」
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