死地へと向かう純情「そや、聡実くんにこれあげる」
「……?」
じゅうじゅう、ぱちぱちと鉄板の上で油が跳ねる音に混ざりながら男の声が響く。現在午後一時半、お好み焼きが焼けるのを待つ間の空白に差し出されたそれを受け取ると男は少しだけ口角を緩めた。
両手ですっぽり覆えてしまうサイズの紺色の小箱に滑らかな白いリボンがきっちりと結ばれている。一瞬まさかとは思ったが箱を一周ぐるりと眺めてもあからさまなブランド名なんかは刻まれていなかった。バレないよう安堵の息を溢してから「開けても?」と問うと、返事の代わりに開けろと片手で促される。
リボンを引っ張ると結び目はするすると解けて重力に負けた端からテーブルに落ちていく。若干の緊張と不安を感じながら蓋を摘み、かぱりと開いた中には、
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