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    shirone_chiro

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    shirone_chiro

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    カイシグちゃんの出会い。

    ##カイシグ

    出会い「はぁ…。」
    大きな溜息を吐き、購買で買ったパンを中庭で一人で口に頬張る。
    元はと言えば自分が撒いた種なのだが、流石に教室に居づらい。

    事の発端は今から一週間前。入学式初日だ。
    たまたまカツアゲ現場に居合わせ、注意したところそのまま喧嘩になってしまったのだ。殴り合いの喧嘩している間に助けた生徒はどこかへ行き、騒ぎを聞きつけて教員が駆け付けると、相手も逃げ、残ったのは俺だけだ。事情を説明しようとしたが頭ごなしに怒鳴りつけてくるものだから、腹が立って教員も殴ってしまった。その結果、俺は入学式に顔を出す事も、クラスメイトと顔を合わせる事もなく、一週間の停学処分となり今に至る。

    一週間経ってしまうと当たり前だがクラスメイトはある程度グループが出来ているし、俺には入学式初日に教員殴って停学になったヤバいやつだと既に広まっていた。
    まぁまだ停学明け一日目だ。凹んでいても仕方ない。そのうち落ち着くだろう。
    ぼんやりとそんなことを考えながらパンを頬張る。

    ふと空を見上げると屋上に人影が見えた。
    あれは……
    屋上のフェンスの外に腰掛けている。
    心臓がドクンと跳ねる。

    残ったパンを口に押し込み、急いで校舎の階段を駆け上がる。
    屋上のドアを勢いよく開けると、周囲を見渡す。

    「あっ!いたっ!お前危ないだろっ!」
    そう叫ぶと座っていた人物はゆっくりと振り返った。
    「あれ?不良くんじゃん。」
    彼の顔には見覚えがある。同じクラスで朝から女子に囲まれてキャッキャウフフしていたチャラ男だ。彼は立ち上がると校舎の縁ギリギリでくるりと回転してコチラを向く。
    「危ねぇって!」
    「そんな怖い顔すんなって。落ちた所で死なねぇんだから。」
    そう言うと彼はクスクス笑う。
    「いいから早くこっち来いよ。」
    「だから大丈夫だっつってんのに。もしかして俺の事心配でここまで来ちゃったの?意外と優しいんだ?」
    彼はまるでこちらの反応を楽しむかのように、校舎の縁を歩き始める。
    落ちた所でインクリングは死なない。そんな事は知っている。なのにどうしようもなく心がざわつくのだ。
    「…わかったよ。そっち行く。」
    彼はフェンスをよじ登ると、目の前に飛び降りて来た。
    「ありゃ、不良くん意外と小さくて可愛いじゃん♡」
    「うっせぇ。」
    自分の頭を撫で回す手を払い除ける。
    「よく見ると不良くんお顔も可愛いじゃん♡」
    「ベタベタ触んなっ!それに俺は不良じゃねぇ!カイだ!」
    顔を触る手を掴み、自分の名前を名乗る。彼は一瞬目を丸くしたかと思えばニッコリと微笑んだ。
    「…俺はシグマ。よろしく。高校生活、最高のスタートダッシュ切っちゃったカイくんに、シグちゃんがお友達になってあげちゃうぞ☆」
    彼はそう言うと手を差し出して来た。
    正直コイツみたいなチャラ男はあまり好きでは無い。でも何故か彼の瞳から目が離せない。
    俺は差し出された手をぎこちなく握った。
    「よろしく…シグマ。」
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    DOODLE天使の漣
    天使 平日の十四時のカフェなんて、人気のないものだ。タケルとの待ち合わせまで、時間つぶしに入っただけの漣にとって、それは都合のいいことだった。どこかの日陰でやり過ごすには暑すぎる日だった。
     心地いい雑音と、ゆったり氷の融けていくアイスティー。机の上に溜まっていく水滴を尻目に、背中の違和感が増す。漣は何度も姿勢を変えながら、じんわりと広がる痛みに眉根を顰めた。普段ならしまっているはずの羽が、窮屈そうに頭を出す。
     自身が天使であることは、タケルには隠していなかった。満月の夜にしか姿は変わらないし、日常生活に支障はない。ただ、こうして時々、背中が痛むのだ。早く人間の殻から解放されたいというように。
     人間でありつづけることを選んだのは漣自身だった。天使の母親と人間の父親の間に生まれ、父と共に暮らすことになったその時に、その運命は決められた。強い存在であることを望まれながら、人知の及ばない力が身体を襲う時、自分の存在意義がわからなくなる。漣にとって、満月とは煩わしいものだった。一種の呪いに、血を恨む。顔も知らない母親は、どうして父となど交わったのだろう。堕天する気もなかったくせに。
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