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    やらい

    @zha173805055973

    ざっくりとアレな落書き置き場です

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    やらい

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    さいやま
    現パロ
    リーマンさいとうくんの元に天使なやまなみせんせいが落ちてくる話
    R18予定

    僕の天使ちゃん(斎山)季節が移ろいつつあるこの頃。
    限界社畜サラリーマンでも、空気感の移り変わり具合を感じる事が出来るんだな、と斎藤はぼんやりと思う。
    社会の荒波に揉まれ、磨り減り、くたくたになった感性でも、空の色味が少しだけ暖かく和らいでいくのが分かる。
    あらまぁそんじゃまぁ、僕ってばまだいけるのかも、と思考する斎藤の目の下の隈は濃い。
    公園のベンチに腰掛けて、ささやかなランチタイムを終えて、重い瞼を閉じる。
    深い溜め息を吐きながらポケットを漁り、煙草の箱とライター、そして端末を取り出す。
    トントン、と煙草を一本取り出してそのままフィルターを食み、先端にライターで火を点ける。
    それから、端末に刺さりっぱなしのイヤホンを耳に装着し、好みの曲を流す。
    ふぅ、と斎藤は煙草の煙を細く長く吐き出した。
    ああ、コーヒーを買ってくれば良かった。
    そんな事を思いながら空を見上げてみると、やたらと烏が飛び回っている事に気付く。
    カァア、カァア、と強く鳴いている。イヤホンから流れる曲に鳴き声が混じる。
    あれは何かを警戒している時の声だ、と斎藤はぼんやりと思考する。
    中学生の頃の自由研究で、烏の生体を調べた事がある。
    …何故烏なのか。それは中学二年生の多感な益荒男が患った病気故だ。
    高校二年辺りで勉強や部活動が忙しくなり、一応寛解したのだが。
    昔を懐かしく思いながら、歪に笑う斎藤は今年で二十四。
    大学ではそれなりに遊んだが、今は仕事が忙しく余裕が無い。
    四方八方に散らばった友人とも縁遠く、女っ気にもゆかりが無い。
    無い無いだらけに慣れてしまった挙句の果て、今では感情まで希薄になっている。
    しかし―――
    自称希薄な感情に響いてくる烏の声。仲間を呼んで作られた不穏な群れ。
    ガァガァガァと臨戦態勢を取る激しい鳴き声に変わっている。
    なんだろう、と斎藤は空を訝しがりながら眺める。
    そして、ああ、と納得した。
    彼らの縄張りを侵した、青い鳥がいる。珍しい色の鳥だ。
    攻撃を受けて、フラフラと心許なく飛んでいる。
    暗澹たる病に罹患した者の使い魔達に襲われていると思うと気の毒になる。
    斎藤は咥え煙草をして、端末を手に取った。
    動画サイトを開き、検索欄にカラス、ワシ、タカ、と入力する。
    すると、烏が襲われているサムネイルが何件か出てくる。
    そこから的確な動画を開いてイヤホンのジャックを抜き、端末の音量をこれでもかという程大きくして空に向けた。
    …流石、烏は賢い。
    斎藤の周りを低空飛行していた数羽がざわつき始める。
    斎藤が持つ端末から発せられる烏の悲鳴に気付いたのだ。
    鷹の鳴き声も混じったその音源を聞いた数羽が、これまた変わった挙動をして、上空に舞い上がっていく。
    自由研究も結構役立つものだな、と斎藤は紫煙を吐き出す。
    烏の撃退方法もしっかり調べ上げている。烏は天敵である猛禽類の鳴き声に冷静さを欠くのだ。
    そこに自らが放つ悲鳴を加えれば、より混乱して一目散に逃げていく。
    斎藤の思惑がそのままになり、烏は散り散りに去っていく。
    青い鳥はというと、飛行困難になってしまったのか、弱弱しく羽ばたいた後、公園内の木に落ちて行った。
    「ありゃ…」
    あれだけ突き回されたら仕方がないと思う反面、良心がうずく。
    そして、珍しい色を持った鳥に興味を抱いた。
    斎藤は携帯灰皿を取り出しながら立ち上がった。
    煙草を消しながら、鳥が落ちていった方向に向かう。
    茂みに入って、木々の合間を目を凝らしながら見る。
    枝、葉、何処かに引っ掛かっていないものか。
    保護色になってしまっていて見つけにくいか。
    そう思った瞬間、目の前にはらり、と水色の羽根が落ちてきた。
    斎藤はそのまま視線を上に上げる。手を伸ばせば届きそうな枝の上に、ソレが居た。
    動かない。それなら逆に捕まえるには好都合だ。
    「死んでないでよっっと……」
    土の上にせり上がっている木の根に乗り、上手い具合にソレを手繰り寄せる。
    「……あ?」
    指先を通じて得た違和感に、斎藤は素っ頓狂な声を上げた。
    後、
    「うわっ」
    足下が滑り、盛大に尻もちをつく。
    その間、全てがスローモーションに見えた。

    自身が手繰り寄せたソレは鳥のようでそうではなかった。
    青の布を纏った小さな人型。
    その背中に傷付いた水色の羽根が生えている。

    とにかく色々な絵画を見ては胸躍った中学生時代の、
    自分の記憶によるところの、

    ―――所謂天使が、

    鳥語花香、自身の胸に落ちてきたのだった。


    続く
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