3回戦終了間際、洋館の中にひとり残されたクリスティーヌ。考え事に夢中になっていて完全に自分の世界に入っている。
愛しの彼はどこにいるのか、これからどうやって戦っていかなければいけないのか、そんなことを考えながら洋館の中をぐるぐると歩き回っている。女の子に悩みはつきものって言うでしょう?とでも言いたげな様子。
「こんなところにいても何も見つかりませんよね…!!早くこの傷を治してもらわなくちゃ……」
そう言いながら自室に帰ろうとしたその時。背後で何かが倒れたような物音がした。怖がりながらもクリスティーヌは確認しに行く。
そこにいたのは愛しの彼、エリックだった。人間の大きさのまま微動だにしない彼は、壁にもたれかかったまま虚ろな目でクリスティーヌを見つめる。
まるで人形のようになってしまった彼にクリスティーヌは近づき、頬を撫でる。
そして何かを諦めた様子でエリックを背負い、自室へ戻る。
静かな自室の椅子に座らせたエリックにクリスティーヌは問いかける。
「なんでわたしじゃないんですか?」「どうしてあの女のひとのこと隠してたんですか?」「わたしに勝手にいなくなるなって言っておいて自分はいなくなるなんてひどいです……」
何度問いかけてもエリックからの言葉はない。それもそのはず、エリックの中身はとうの昔にいなくなっているのですから。
薄々気づいてた。わかってはいたんです。受け入れられなかっただけ。もう二度とあなたとお話できないって思うと辛くなるから、だから見ないふりしてました。
でも今あなたはわたしののところに戻ってきた。もう離したくない、絶対離れたくない。
あなたはもう生き人形。わたしは人形に恋する変な子になっちゃうのかな…?
今のあなたはわたしがいないとなんにもできないんです。わたしから離れることなんて許さない。あなたが勝手にいなくなるからこうなるんですよ?
でもこれでずっと、わたしが死ぬまでずっと……。一生一緒ですね💕︎なんだかドキドキします💗
エリックは昔から自分のことを「怪人」って言ってました。だけど今は、わたしの方が怪人みたいですね…?
あなたがわたしのことを狂信するから。わたしだって後戻りできなくなっちゃったんです。招待状が届いた時、あなたが「クリスティーヌの歌を見せびらかしてこよう」なんて言わなければきっとこんなことにはならなかったんです。わたし、人を殺さなきゃいけないなんて知らなかった。あなたが話さないから。
知っているようであなたのこと全然知らないってことに、あなたがいなくなって初めて気づきました。また会えたら何を聞こうとか、いない間のことをどこから話そうとか、いっぱい…いっぱい考えてたのに……!
もうお話はできないですけど、愛し合うことはまだできるから……
「わたしはもう何も怖くありません。一生一緒の約束、守ってくれますよね……?💗」